湯浅誠 岩波新書 新赤版 1124 2008/4
先日紹介した『貧困襲来』の著者の最新作。制度として存在するセーフティ・ネットには、穴が開いていて、すべり台のように落ちていく様子が、さまざまな事例で描かれています。
90年代に貧困の質が変わった原因として、派遣労働の拡大を挙げています。
人材派遣業者から取引先に派遣された労働者は、派遣先企業に対しては基本的に労働者としての権利をもたない。派遣される労働者の賃金は、会社の経理上「人件費」ではなく「資材調達費」になどに分類されることが、その立場を象徴している。p.154
一方、グッドウィルは国の規制緩和で成長し、会長は経団連の理事になりました。
p.148では、エム・クルーを取り上げて、貧困層が厚くなり、ついにビジネスの対象となったとし、このような事業を「貧困ビジネス」と呼んでいます。
このような状況を改善するためには、政治の労働市場に介入、労働組合やNPO間の連携が必要だとしています。
この本を読んで、貧困層の緊張感がかなり高まっているのが、わかりました。この問題は、どう解決したらいいんでしょうね。経営側にしてみても、かつてないほど急変する市場を相手にしており、固定費の変動費化は、とめられない状況になっています。昨年の今時点で、リーマンの破綻を予見できた人は何人いたでしょうか。見方を変えれば、経営者は激変する市場で、派遣社員を組み込むことで、ショックを和らげ、結果として、正社員の雇用を守ったともいえます。全員を正社員として雇えば解決する問題でもないですね…。
引き続き、研究します。
では。
【参考】
・本書が、大佛次郎論壇賞を受賞しました。