【本】「格差」の戦後史

「格差」の戦後史–階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)

橋本健二 河出書房新社 2009/10

格差が問題視されて久しいですが、不思議と「階級」という言葉が全面にでないですね。本書では、戦後を7つの時期に区分し、格差と階級構造の変遷を描いています。

  1. 敗戦~1950年
    戦後改革によって、格差は縮小
  2. 1950年代
    傾斜生産方式が採用され大企業が復興すると、格差は拡大
  3. 1960年代
    高度経済成長による労働力不足で、賃金格差は縮小
  4. 1970年代
    階級が学歴と呼ばれた時代
  5. 1980年代
    中小企業の業況が悪化し、格差拡大が始まる。
  6. 1990年代
    企業倒産増加で格差に注目が集まる。
  7. 2000年代
    アンダークラス」が出現。

これだけ長い期間でデータを追いかけると、小泉改革が格差を拡大したというのは、視野の狭い議論だということがわかりました。単にデータを分析するだけでなく、時代背景も描いているので、印象に残る例がいくつかあります。

  • 昭和46年、OECD教育調査団(Edwin Oldfather Reischauer元駐日米国大使、エドガー・フォール元仏首相・国民教育相)の報告書『日本の教育政策

 日本の社会には、東大・京大卒業生を頂点に、その他エリート大学卒業者、それ以外の大学卒業者、高卒者、それ以下の卒業者という序列からなる独特の階級構造がある。どの階級に所属するかは、各段階の入学試験によって決まる。そしていったん決まった階級は変更することがきわめて難しく、就寝雇用の慣行と相まって、人々の生涯を決定する。この意味で日本の社会は、近代的な意味での階級からなる自由社会というよりは、伝統的なカースト社会に近い。p.152

  • 阪神・淡路大震災(95年)の被災者が、社会的弱者(女性・高齢者・低所得者)に集中していた

コンセプトとしては、「アンダークラス」が印象に残りました。約800万人、全就業人口の12.8%を占める。大きな数字ですね。

では。

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