【本】絶対貧困

絶対貧困
石井光太 光文社 2009/3

ノンフィクション作家による途上国の貧困ドキュメント。私にとっては懐かしい国々の話で、数多くの写真から、貧困の実態が今もなお変わらないのが伝わってきます。

私も旅行記を書いている時に、一部の読者が不快に感じるかもしれない話題は避けてきました。売春や、犯罪などです。本書では、清くも、正しくも、美しくもないこともサラっと書いていて、途上国にグっと引き寄せられる本になっています。

途上国の貧困の話で象徴的なのが、p.120の人口ピラミッド。インドネシアは、30、35歳といった切の良い年齢が圧倒的に多くなります。みんな自分の誕生日をしらないので、アンケートにこう答えてしまうんですね。政治は、データを分析して対策を打つのですが、その前提が成り立っていないのが、貧困層の世界なんですね。

本書では、厳しい生活の話が次から次へと続くのですが、ときどきページをめくる手がとまる話が出てきます。たとえば、スラムの葬儀の話。生きてくだけで精一杯の彼らは、葬儀代を払うことすらできません。

私が一番驚いたのは、地元マフィアの親分がやってきてその場で葬儀に掛かる費用を何の見返りもなしに全額払ったことでした。p.130

死ぬ話があれば、生まれる話。無報酬で産婆をするおばさんがこんな言葉を残します。

アフリカでは、みんなお金を目当てに戦争をしたり、虐殺をしたりしている。私は赤ちゃんが生まれてくる時ぐらいはお金に関係なくやってあげたいのさ。生まれた時から赤ちゃんをお金の毒にさらしたくないんだよ。だから、私は路上の産婆で満足なんだ

途上国にいくと、ふとこういう話が出てきますね。最近内向きなニッポンですが、世界にも目を向けなければなりません。

では。

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