【本】フェイスブック 若き天才の野望

The Facebook Effects

by David Kirkpatrick

1999年にアメリカに留学したとき、学生名簿は紙でした。その時の写真は、本書でも触れられている通り、早く消してしまいたいものでありました。イスラム系の女性が写真を掲載していないのを発見し、アメリカ社会の複雑さを感じたりしました。

それから5年後。ハーバードで起こった学生名簿の電子化が、遠くは中東の政治にまで影響(Effects)を及ぼすようになっています。本書では、フェースブックの創業から現在にいたるまでの動きがよくわかります。

まずは、起業のお手本として読み応えがありました。ドミトリーから始まった会社が、親からの学費をサーバーに変えながら大きくなっていくのは、とても参考になります。

早くから弁護士と相談したり、広報担当を雇ったりするのは、アメリカ的ですね。VCとのやりとりも活写されています。磯崎さんの『起業のファイナンス」の実践編としても読めます。

資金確保に並んで難しいのが人材確保。

「辞めるなんてとんでもない間違いだ。一生公開するぞ。ザ・フェイスブックはすぐにものすごい会社になるんだ!ビデオサイトなんて掃いて捨てるほどあるじゃないか」

しかし、言うことを効かずにチェンはザ・フェイスブックを去ってビデオ・サービスを立ち上げた。それがユーチューブだった。

シリコンバレーのダイナミズムを感じさせるエピソードです。

事業戦略としては、「ドミナント出店」が印象に残りました。リクエストのあった大学に進出するというのではなく、そのエリアに集中的に導入して、ライバルサービスに打ち勝っています。

システム・マネジメントとしては、きちんとScalabilityに配慮して事業を進めているのが印象的です。サービスの質を落とさずに売上を拡大するためには、サーバーの容量をいかにつないでいくかが重要なんですね。それも、クラウドになった今では、比較的容易にできるようになっているのですが。

オープンソースの威力も実感できます。MySQL(無料)などがなければ、もっと早い段階で資金が枯渇していたというのは頷けます。

フェースブックを”OS”にしようとする思想は要チェックです。

社会への影響は、p.433。

ハメルは、歴史上彼が言うところの「人間の能力を集約し増強する」方法は基本的に2通りしかないという。官僚制と市場である。

「そしてこの10年の間にネットワークという三番目の存在が現れた。それはわれわれが複雑な仕事を一緒に行う手助けをする、と同時に誰の声を聴かせるかを決めるエリートの権力を破壊する」

読み終えて一番印象に残るのが、学生がこれほどまでにイキイキと働いている姿。映画の影響もあり、お金、権力、女性とアサ芸的な取り上げられ方もされてますが、秀逸な起業のケーススタディですね。

では。

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