【本】名経営者がなぜ失敗するのか

名経営者が、なぜ失敗するのか?名経営者が、なぜ失敗するのか?
WHY SMART EXECUTIVES FAIL
シドニー・フィンケルシュタイン 日経BP 2004/6

サブプライムで、名経営者が去っていきました。3年前の本ですが、読み返す価値があろうかと。Finkelstein氏は、タック・スクールで教鞭をとり、”Top Management Team”(企業経営者論)と、”Learning From Mistakes”という授業を担当してました。本書は、1997年から6年間にわたり、失敗してしまった51社のレポートです。ビジネスの世界にいるとスター経営者に目が行ってしまいますが、大切なのは失敗から学ぶことなんですね。


そのうち、日本からは、4件が取り上げられています。
・ソニーのコロンビア・ピクチャーズ買収、
・日産の北米事業
・ファイアストンのタイヤ事故
・雪印の食中毒と牛肉偽装事件

最初に7つの俗説が紹介されます。

 トップが無能であった
トップが先を読めなかった
現場が混乱していた
トップに努力が足りなかった
トップにリーダーシップが不足していた
経営資源が足りなかった
トップがそもそも大悪党だった

しかし、これらの俗説はことごとく否定されます。もちろんそういう会社もあるのですが、本書は、Why smart executives failなのであり、それでも失敗してしまう理由をひたすら追っています。
モトローラの歴代CEOは、アナログからデジタルへの以降は必然だと考えていたにもかかわらず、マーケットシェアの3分の2を失ってしまいました。
優秀な企業が失敗するには、次の4つの局面です。

・新規事業にに乗り出すとき
・イノベーションの導入や変化に対応するとき
・M&Aに乗り出すとき
・競争相手に反撃するとき p.43

ふとドコモが頭に浮かびます。新規事業に乗り出すときに覚えておくべき9ケ条がp.92にあります。

失敗してしまう原因は、主に4つ

・経営トップの現状認識を誤る
・現状認識の誤りに気づかない
・緊急情報の伝達が阻まれる
・リーダーシップ不在でトップの誤りを修正できない

現状認識が正しいか、確認のための10の質問がp.244にあります。

対策は、2つ。

・危険な兆候を明らかにする
・自己診断ツールを提供する

ひとことでいうなら、

それは、組織内に事実を話しやすい土壌をつくれ、ということである。そして、現場責任者や従業員が懸念や提案をためらいなく口にできるようにするには、経営陣が率先してそんな”社風”をつくらねばならない。p.13

なのだと思います。
調査を終えた教授の感想は、こちら。

『名経営者が、なぜ失敗するのか?』はたしかにビジネスに関する書籍だが、調査を終えたときはっきりしたのは、これが”人間”についての考察であるということだった。p.13

パールバックの言葉が心に響きます。

大きな失敗には必ずその途中に引き返せる瞬間がある。問題に気づき、それを修復できる時間があるものだ。(『アメリカに学ぶこと』)

では。

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