Promised Land by Barac Obama, Crown 2020
邦訳 『約束の地 大統領回顧録』生い立ちから大統領1期目、2011年のオサマ・ビン・ラディン殺害までが描かれています。750ページ。本が重いです。
【目次】
Part 1 The Bet
1章 読書三昧の高校時代。大学卒業後は、地域の課題解決に向けて住民を連帯させていくコミュニティ・オーガナイザーに。
2章 ミシェルと出会い、結婚。格差を失くすため政界入りを決意。イリノイ州上院議員選に出馬。
3章 連邦下院議員選で落選。国民同士を結び付ける理想に燃え、連邦上院議員選に出馬。
4章 大統領選出馬。テッド・ケネディの言葉。
Part 2 Yes We Can
5章 2007年2月大統領選出馬宣言。予備選でのヒラリー・クリントンとの闘い。大口資金提供者ではなく、草の根の支持を集めていく。アイオワ州での勝利。
6章 黒人有権者の複雑な反応。親交のあるジェレマイア・ライト牧師の過激発言。選挙戦中に感じた人種の壁。
7章 スーパー・チューズデーの勝利。SNSの活用。ミシェルとともに、細かい言動まで批判され始める。予備選勝利。
8章 ヒラリーと和解。共和党大統領候補ジョン・マケイン、共和党副大統領候補サラ・ペイリンについて。アフガニスタン視察。
9章 サブプライムローン危機。財務長官ヘンリー・ポールソンとの対談。ブッシュ大統領、マケインと会談。
10章 大統領選勝利。政権移行。ヒラリー・クリントンを国務長官へ抜擢、ロバート・ゲイツ国防長官の続投など異色のメンバーを集め、自身のバイアスを是正。
Part 3 Renegade
11章 リリー・レッドベター公正賃金法。金融危機対応。アメリカ・復興再投資法。共和党上院の議事妨害。
12章 金融機関へのストレステスト。ウォール街トップたちの開き直り。自動車産業救済策。保守系メディアが存在感を増す。
13章 “世界の中のアメリカ”についての複眼的な視点。国家安全保障チーム内の世代間格差。イラク撤退、アフガン増派。軍病院で負傷兵を慰問。
Part 4 The Good Fight
14章 ロンドンG20で外交デビュー。メルケル、サルコジ、メドヴェージェフへの人物評。
15章 ソマリア沖の海賊事件。テロ対策。サウジ訪問。カイロ大学での演説。
16章 テッド・ケネディの医療保険制度改革にかける思い。医療保険制度改革法案通過のための交渉、妥協。
17章 オバマケア法案の票集めのため演説ツアー。“ティーパーティ運動”が台頭。
Part 5 The World As It Is
18章 アフガン戦況の悪化。国防総省との溝。ノーベル平和賞受賞。
19章 “ほほえみ外交”スタイルの確立。ロシア公式訪問。プーチンとの会談。
20章 アジア訪問。グローバル時代の米中関係について。訪日、皇居で天皇・皇后両陛下と会談。
21章 気候変動問題。温暖化対策をめぐる国内政治状況。コペンハーゲン会議への参加。
Part 6 In the Barrel
22章 国内経済の回復。ギリシャ危機対応。女性スタッフの不満。
23章 メキシコ湾原油流出事故。中間選挙。スタンリー・マクリスタル アフガニスタン駐留軍司令官の更迭。
24章 インドの現状とシン首相への人物評。中間選挙の敗北。短い残りの会期で多くの法案を通過させる。
Part 7 On the High Wire
25章 パレスチナ和平交渉。ネタニヤフとの会談。エジプトのデモとムバラク退陣。
26章 リビアへの軍事介入。ブラジル訪問。貧民街の子どもたちと交流。ドナルド・トランプが存在感を増し始める。
27章 オサマ・ビン・ラディンの殺害計画
本書が出版されたのは、コロナで不透明感が高まった時期でした。本書が、若い世代へ向けての書であると書いています。
More than anyone, this book is for those young people — an invitation to once again remake the world, and to bring about, through hard work, determination, and a big dose of imagintion, an America that finally aligns with all that is best in us.
xvi
大統領選挙に出馬を検討している時に、Ted Kennedy議員が言った言葉。
The power to inspire is rare. Moments like this are rare. You think you may not be ready, that you’ll do it at t more convenient time. But you don’t choose the time. The time chooses you. Either you seize what may turn out to be the only chance you have, or you decide you’re willing to live with the knowledge that the chance had passed you by
p.69
ミシェル夫人に出馬の意義を伝える時の言葉。
I know the day I raise my right hand and take the oath to be president of the United States, the world will start looking at America differently. I know that kids all around this country — Black kids, Hispanic Kids, kids who don’t fit in — they’ll see themselves differently, too, their horizons lifted, their possibiities expanded. And that alone … that would be worth it
p.77
大統領選後数日で、引き継ぎがあるのですね。
My first visit to the Oval took place just days after the election, when, following a long tradition, the Bushs invited Michelle and me for a tour of our soon-to-be home.
p.206
その後のトランプ政権を知っているだけに、政権交代とその直後のリーマンショックへの対応は、感慨深いです。
大統領と議会の対立が伝わってくるところは、たとえば、
It’s hard for me not to fixate on the political dynamics that unfolded in those first weeks of my presidency — how quickly Republican resistance hardended, independent of anything we said or did, and how throughly that resistance colored the way the press and ultimately the public viewed the substance of our actions.
p.262
大統領の重責が伝わってくるのは、たとえばこちら。
At the start of each day of my presidency, I wold find a leather binder waiting for me at the breakfast table Michelle called it “The Death, Destruction, and Horrible Things Book,”though officially it was known as the President’s Daily Brief, or PDB.
p.312
それでもリーマンショックに対応し、「アメリカ復興・再投資法(復興法)」を就任後約1カ月で成立させました。
第12章は、有権者からの手紙から始まります。
大統領には、毎日1万通もの手紙やメールが届くのだとか。オバマ氏は、その一部をスタッフに選ばせ、読むことを日課としていました。
外交の裏側も興味深い箇所です。ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領を対比して描写していました。メルケル首相が、当初、オバマ大統領に懐疑的で、その理由が、「口が達者」だったことは興味深いところです。後に、メルケル首相を、尊敬するようになります。
The more I’d gotten to know Angela Merkel, the more I’d come to like her; I found her steady, honest, intellectually rigorous, and instinctually kind.
p.526
フランス・サルコジ大統領
Sarkozy, on the other hand, was all emotional outbursts and overblown rhetroic.
p.335
胡錦濤首相は、平坦な記述。
By all accounts, Hu Jintao, a nondescript man in his mid sixties with a mane of jet-black hair (as far as I could tell, few Chinese leaders turned gray as they aged) – was not seen as a particularly strong leader.
p.338
2022年に、習近平からこのような仕打ちを受けるとは、思いもよらなかったでしょう。
プーチン大統領に対しては、警戒しているのが伝わってきました。
Physically, he was unremarkable: short and compact — a wrestler’s build — with thin, sandy hair, a prominent nose, and pale, watchful eyes.
p.464
日本の記述は短いですが、皇居訪問のことを丁寧に記述していました。p.477
広島訪問の背景は、次号になると思いますが、楽しみです。
【参考】