ノルウェー

私の世界観光地ランキングは、1999年にアマゾン川クルーズが首位になってから23年目にして1位が入れ替わりました。ノルウェーについて書いてみます。

I.基準

 私の基準を一言でいえば、「すごい」です。ナイトライフやショッピングの面白さよりも、観光ハイライトに行った時の驚きを評価しています。遺跡や自然遺産が上位に来ているのはそのせいです。
 今回、順位が入れ替わった理由の一つは、私が年をとったことにあります。若い頃は、海外旅行が3度の飯よりも好きでしたが、いまはもう体力がありません。ノルウェーの物価は世界一ですが、快適に旅できるのであれば、もうマイナスではなくなりました。

II.オスロ

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 まず、移動が快適でした。ノルウェーはEUではないのですが、シェンゲン圏なので、オランダから国境管理なしで飛行機に乗れます。出発1時間前に空港に行けば、1.5時間のフライトでオスロに着きます。
 時差もありません。日本からの直行便がないため、すくなくとも16時間移動にかかります。7時間の時差の時差に対応するには数日かかることでしょう。オランダからなら時差もありません。
 30余年の海外旅行歴の中で初めて両替しませんでした。ノルウェーは、世界で最もキャッシュレスな国のひとつです。1ノルウェークローネは、14円なのですが、すべてカード払いで済みました。バスに乗って行き先を告げると、端末に金額が表示されるので、銀行のキャッシュカードをかざして払うだけでした。
 空港からオスロ中央駅までも鉄道で20分ほど。WiFiも使えて、文句なしです。
 気温も、最高気温が20度ほどなので、長袖シャツ1枚で済みました。熱中症になる心配もなく、市内散策も苦になりません。年取ると、これが一番ありがたかったかもしれません。
 空気もきれいですね。新車販売におけるEV比率は87%(2022)と世界一。車が静かなので、後ろから近づくのに気づかないほどでした。

 水もおいしいです。ノルウェーの田舎の水は、南アルプスの天然水的な美味しさでした。ホテルの部屋には、ミネラル・ウォーターのボトルが置いてませんでしたが、文句ないです。
 海の幸に恵まれているのは日本と似てました。ノルウェーは捕鯨国です。サーモン・イクラ丼はおいしかったです。私は、寿司ネタの中ではサーモンを下に見ているのですが、鮮度が違うとこんなにも美味なものなのかと見直しました。養殖とはいえ、あんなきれいなフィヨルドで育ったら、おいしくなるのでしょう。
 日本の鮭市場で国産は2割で、8割が外国産。世界の鮭養殖市場の45%がノルウェー産です。おいしい鮭を食べたければノルウェーなのですね。

 しかし、そのサーモン・イクラ丼を上回ったのは、フィッシュ・スープでした。中に入っている鮭も、トッピングされているプルプルのいくらも良いのですが、スープの出汁が絶品でした。海洋国家なので、海の幸の活かし方は知っています。

 オスロの観光地の人気No.1は、フラム号博物館。私は、この手の施設は、通常パスするのですが、意外に良かったです。ノルウェーは人口540万人の小国なのですが、1911年、南極点に最初に立ったのはアムンセンでした。彼は、当時の大英帝国の威信を背負ったスコットよりも先に偉業を達成したのです。その船が展示されているのですが、巨大な木造船にバイキングの誇りを感じました。

 スコットが最先端技術を駆使し、物量にものを言わせたのに対し、アムンセンは、イヌイットなどの知恵に学びました。たとえば、スコットは馬を連れて行ったために、馬の食料も持っていきました。馬は寒さに耐えられず、重い荷物のためにスピードが遅れました。
 一方、アムンゼンは犬ぞりで、途中で魚を捕まえながら進みました。荷物が最小限で済みました。小国が生き抜く知恵なのだと思います。

 ムンク美術館が良かったのも意外でした。2012年、「叫び」が当時世界最高値の96億円で落札されたこともあり、その印象が強いですが、実に様々なな絵を描いていました。妹を描いたInger in Black and Violet (1892)など、それぞれ味わいがありました。オランダにゴッホがいるように、ノルウェーにムンクがいるのですね。

 ホテルのスタッフも、控えめで良かったです。冬は4時には暗くなり、-20度になる田舎では、村の掟に従わなければ生きていけません。自然に微笑むようになり、まず人の話を聞くようになります。まさに、私のアナザー・スカイであるミネソタと同じです。
 北欧とひとくくりにされがちですが、おしゃれな北欧は、デンマーク、スウェーデン、フィンランドです。Norwegian wood は、イケアだという冗談もあるほど、おしゃれへの関心は低いです。
 代わりに、アウトドア志向。ノルウェーの赤ちゃんはスキーブーツを履いて生まれてくると言われるほど。Ski の語源がノルウェー語だと言われると納得です。この人口で、冬季五輪で最多メダル獲得は立派です。