【本】検証 中小企業金融

検証 中小企業金融

渡辺努 日経 2008/9

私が入行した時には、中小企業向け金融が成長分野とされていました。日本には433万社の企業があり、その99.7%に相当する432万社は、従業員300人以下、もしくは資本金3億円以下の中小企業です。大企業が直接金融に移行する中、銀行が中小企業にシフトするのは必然でしたが、学術的な研究は、その後も進んでいませんでした。
本書は、近年整備された中小企業信用データベース(CRD)などを分析することで、これまでの通説を検証しています。(目次)

  • 中小企業においては、非効率的な企業が存続するなど、淘汰メカニズムが正常に機能していない
  • 中小企業向け融資の貸出金利は適切に設定されていない
  • 信用保証枠の拡大は所期の効果をもたらさなかった

などは、データから裏付けられませんでした。現在も、さまざまな政策が、政府から打ち出されています。前回、クレジット・クランチが起こった時期の分析を通じて、日本の中小企業金融においては競争メカニズムが働いており、効率の悪い企業は市場退出しているのが明らかにされています。

こういう地に足のついた分析がさらに進むといいですね。

では。