【本】Suicaが世界を変える

Suicaが世界を変える JR東日本が起こす生活革命Suicaが世界を変える JR東日本が起こす生活革命

椎橋章夫 東京新聞出版局 2008/5

JR東日本 IT・Suica事業本部 副本部長の開発ドキュメント。Suicaは、これまでコンサルタントや、金融面からの分析が多かったのですが、本家の開発担当者によるドキュメントが出ました。タイトルとは離れて、鉄道の話になってしまうところは、ご愛嬌。インフラ産業が、どのように発展していくのか、非常によい例だと思います。

ハイライトは、2005年11月に放送されたプロジェクトの内容に沿ったものでした。P.84に、SONY日下部さんの話が出ています。FeliCaは、大賀さんが、復活させてたんですね。知りませんでした。

JR東は、90年に自動改札に磁気式を採用し、ICカードは10年眠ることになりました。SONYは、香港にこの技術を売り込むのですが、国鉄技術研究所の三木さんは、日下部さんを応援しているんですね。こういう会社の枠を超えて技術者が呼応すると、大きな力になります。

プロジェクトチームが戦ったのは、企業文化でした。

JR東日本にはリスクを徹底的に避ける手堅い経営方針があった。100戦100勝が目標で、最低限でも100戦100分けという企業風土がある。P.105

そのSuicaは、カードの処理時間との戦うことになります。これを乗り越えたのは、積極的ダウングレードとも言える発想でした。「かざす」と0.2秒で通過してしまう乗客がいたため、「触れる」ようにすることで、処理時間を長く取れるようにしました。録音ができるのに、RECボタンとスピーカーを無くして成功したウォークマンを思い出しました。

次に、費用対効果の問題がありました。キセル防止などは期待できたにせよ、結局、メンテナンスコストを毎年13億円削減し、10年で回収するめどをたてました。

この後の成功は、みなさんご存知の通りですが、著者が画期的だと思っているのは、むしろ、PASMOとの相互利用でした。苦労が多かった分だけ、本当に便利になりましたね。

次は、いよいよFeliCaが「人to機械」から「人to人」のコミュニケーションのツールになる時代に移ることになりそうです。

では。


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