Leadership on the Line by Ronald A. Heifetz & Marty 2002
ハーバード・ケネディスクールで教鞭をとる著者によるリーダーシップ論。といっても、机上の空論の対極にあり、常に具体的で、目的を達成するために、何をすべきか、すべきでないかを考え抜いた本に仕上がっています。
日本の組織は、リーダーシップが、人格論になってしまいがちですね。p.276で役割と自己を区別するたいせつさが書かれているのです。育児の例が紹介されています。
父親として最悪なのは、子供が怒り無礼な態度をとったとき、それを個人的に受け取ってしまうことだ。
父親には、子供の行動を制限して躾をする一方で、子供の声に耳を傾ける役割があるんですね。個人の人格を批判されたと思ってはいけないわけです。このように本書では、
今の日本の教育では決して学べない、いまの日本人に必要な内容が詰め込まれている p.330
のでありました。
著者はリーダーシップに対して、非常に厳しく、現実的な考え方をしています。
リーダーシップを発揮するということは、危険な生き方をすることである。p.15
こうした考えをベースに、
①なぜ、どのようにリーダーシップは危険なのか
②それらの危険にどう対応すればよいのか
③困難な状況のなかで心の活力を保つにはどうすればよいか
が、示されています。その具体例は、ネイティブアメリカンの村でアルコール依存症と戦う女性から、クリントン大統領まで幅広く取り上げられています。
人は変化それ自体に抵抗するのではない。本質的には、人は何かを失うことに対して抵抗するのだ。p.27
真のリーダーは、未解決の問題に光をあて、長く続いた習慣に挑戦するがゆえに、抵抗勢力と対立せざるをえないんですね。具体的な危険は以下の4つ
- 脇に追いやられる
- 注意をそらされる
- 個人攻撃される
- 誘惑される
これに対する処方は、
- 全体像をつかむ
- 政治的に考える
- 衝突をオーケストレートする
- 当事者に作業を投げ返す
- 攻撃を受けても踏みとどまる
当事者に投げ返すというのは、なかなかできないですね。p.180にブルズでコーチの指示に従わなかった選手の話がでkているのですが、非常に説得力がありました。
批判に耐えるというのは、日本人のメンタリティに合いそうですが、ここで紹介されているのは、一味違いました。HIV患者の報告を匿名にするかという、非常に難しい問題で、あえて自らの意見を表明せずに批判に耐えたワシントン州保険証の長官が紹介されていました。p.202
彼女が、批判に耐えたのは、「どうせ真意はわかってもらえないから」というものではなく、二つに割れてしまった世論を再びまとめるためには、時間が必要だったからでした。非常に高度な政治的判断ですが、参考になります。
こうした対処を遂行するために、心の安寧を保たなければなりません。そのためには、、
- Manage Your Hunger
- Anchor Yourself
- 原動力を把握する
- 神聖な心を保つ
といったことが必要になります。自分の渇望をコントロールするのは、難しいですね。
実際のところ、リーダーシップにおける最大の誘惑は、あなたの熱狂的な支持者から寄せられるものだ。それは人々に肯定されたいというあなたの渇望に巧みに働きかけ、あなたに過激な振る舞いをするように強く促す。p.242
では。