ミッション・リーダーシップ
ビル ジョージ 生産性出版 2004/7
ペースメーカーのメドトロニック元CEO、Bill George氏の本です。実は、ミネソタ大学MBAプログラムにいた時に、講演に来てくれたのですが、アメリカ経営協会から「2001年度最高経営者」に選ばれる有名な経営者だとは知りませんでした。
アメリカのCEOの話を聞いてプロだなぁと感じるのは、MBAの学生の前に立って、一瞬でその心をつかんでしまうときです。ビル・ジョージCEOもまさにその一人でした。
(中略)ひとりの参加者が「メドトロニックで経営リーダーになるために備えるべき、もっとも重要な特性を示して欲しい」と私に質問した。この問いに対して「一語で表現可能だ。それは本物を目指すことだ」と答えた。(p.15)
というように、実績もさることながら、コミュニケーションが実に巧みな方でした。
アメリカで企業経営を学んでいると、「金儲けに対する素直さ」に時々戸惑うのですが、メドトロニックのようなミネソタ企業を勉強すると、アメリカ企業に対する見方の幅が広がってきます。
P.33では、カールソン社のマリリン・ネルソンCEOの話が出てきます。企業文化を研究していたMBAの学生から「カールソンの社員から、この会社は人材を大切にしない搾取企業だと聞きました」ときくと、猛然と人材を大切にするプログラムを作るという素直さがあります。
先日紹介した「メガトレンド2010」でも、彼が紹介されていますが、精神的な部分の大切さを繰り返し説いています。
リーダーシップはスタイルではなく本物を目指すことから生まれる。
バランスの取れた生活を送る
ミッションは人材をモチベートするが、お金はモチベートしない。
カスタマーがもっとも重要だ
といった言葉に共感する日本人は多いのではないでしょうか。
彼の性格は、P.32で引用しているデプリーの言葉に集約されていると思います。
リーダーの第一の務めは、まず現実を明確にすることだ。そして最後に有難うと言うことだ。ふたつの間では、リーダーはサーバントであり、義理を尊ぶ人であるべきだ
メドトロニックのミッションは、こちらです。
1985年から2002年にかけて、同社の売上高は4億ドルか77億ドルへと毎年19%増加。時価総額は、4億ドルから580億ドルへと年率32%で増えました。
また、メドトロニック製品によって健康を取り戻した患者の数は、世界で類型500万人に達し、累計2000万人を超えています。
こうした偉業を達成した要素のひとつとして、同社のミッションがありました。
日本企業に勤めていると、ミッションを掲げるということは、ともすると、恥ずかしかったりするんですが、長期間チームをひとつにまとめることで、大きな効果を出すんですね。
メドトロニックでは、入社する社員、ひとりひとりにミッションの刻まれたメダルを授与し、社内への浸透を図っています。
CEOの戒めとして、「七つの大罪」を記しています。
・明確なミッションを持たずに進む
・コア・ビジネスを過小評価する
・単一の製品ラインに頼りすぎる
・技術とマーケットの変化を見落とす
・企業文化を変えずに戦略を変える
・自社のコア・コンピテンシーから逸脱する
・成長のために企業買収に依存する
ま、言われてみれば、おっしゃるとおりということばかりですが、経営を続けていると、そういう意識が薄れていきますね。反省。
第15章では、企業のガバナンスが取り上げられています。現在ターゲットになっているデイトンハドソン社のCEO Evaluationです。
MBAのクラスでは、ハーバードのケースを読みながら議論しました。
“CEO Evaluation at Dayton Hudson“
企業でガバナンスを担当している方は、お勧めです。
では(^^)/^
【参考】
・「逆境を乗り越える者」 p.143でも、ビル・ジョージ氏が取り上げられていました。