Barack Obama Jr. ダイヤモンド社 2007/12
民主党大統領候補が、1995年に書いた自伝。540ページにわたって、その半生を書き綴っているわけですが、ハワイ、インドネシア、ケニアとスケールの大きな話になっています。一方、アメリカの人種問題も、鮮やかな筆で描いており、単なる「自伝」を超えた本といえます。
父親はケニアからの留学生でイスラム教徒。母親はスウェーデン系でカンザス育ち。オバマ氏は、ハワイで生まれたのですが、両親は離婚。2番目の父親と暮らすために、インドネシアへ移住。しかし、2度目の結婚もうまくいかず、再びアメリカ本土へ戻ります。これだけ複雑な家族環境であれば、相当な葛藤があったと思うのですが、大学卒業後、シカゴで「オーガナイザー」として働きます。コミュニティのために働いた体験が、今のオバマ氏の原点であるのがわかります。
一番印象に残るのは、お父さんの話ですね。オリジナルのタイトルも、Dreams from My Fatherなのですが、ケニアからアメリカに留学するほど優秀であったのですが、帰国するときに、奥さんと一緒には戻れず、政府で働くものの、内部で衝突して、閑職に甘んずる結果となる。南北格差、人種の問題、権力闘争、古い地域社会のしがらみと、当時考えられるあらゆる問題に関係してしまい、身の置き所がわからなくなってしまったように読めました。
この本を読むと、彼のスピーチ”The Audacity of Hope“が、アメリカ人の心に響くのががわかります。
Well, I say to them tonight,
there is not a liberal America and a conservative America — there is the United States of America.
There is not a Black America and a White America and Latino America and Asian America — there’s the United States of America.
日本にも、これほどの自伝が書ける政治家が出てくるといいですね。
では。