ウィキノミクス マス・コラボレーションによる開発・生産の世紀へ
Web 2.0 のビジネスへの影響を描いた本。トロントに本社がある金鉱山会社ゴールド・コープ社(GG)の例で始まります。鉱脈をみつけられずに倒産の危機にありましたが、探査プロセスを公開し、賞金を用意することで、みごと金脈を見つけます(株価チャート)ウェブ2.0時代を象徴するビジネスモデルです。
ウィキペディアに代表される協業技術によって、世の中が変わるとは思うものの、具体的にどのようにビジネスが変わるのか、いまひとつ実感が持てませんでした。本書は、具体例をあげて、こうしたニーズに応えています。
7つのモデルは、以下の通り。
- ピア・プロデューサー
例)Wikipedia、Linux
- アイディアゴラ
アイデア+アゴラ(市場)=アイデア市場
世界を自社の研究開発部門の一部として扱う。
例)Goldcorp、イーライリリーの”InnoCentive”
- プロシューマー
例)ヒッペルの「リードユーザー」、セカンドライフ、BMWの「バーチャル・イノベーション・エージェンシー」
- 新アレクサンドリア人
- 参加のプラットフォーム
例)Amazon、Google
- 世界工場
例)VMW、ボーイング
- ウィキ・ワークプレイス
BEST BUYのGeek Squad(by Robert Stephens)
ウィキノミクス4大原則は、オープン性、ピアリング、共有、グローバルな行動。通常の企業文化とは相容れないところがあり、この調整をどのように行うかがカギとなる。
p.459には、教訓がまとめられています。
独自提供してきた製品が不調なとき、それをオープン化すると、市場で成功できるだけの創造性とマンパワーが得られる場合がある。
・ある領域の知的財産を公開することにより、それを補完する製品やサービスに対する需要を喚起できる場合がある(IBM)
・強みをプールし、研究開発コストを削減できるというメリットが、生成される知識をすべて社内に蓄積できるというメリットを上回ることがある。
・備えある人材がほしい時には、なるべく広範囲な人材プールを活用して問題に対処するほうがよい(Gold Corp)
一方、この本の厚みは、Wikiの負の面も現れてますね。複数の人が協業できるので、これまでよりも多くの情報が容易に集まり、その選別が必要になってきます。印象に残るのは、こちらの言葉。
自由電子の大半は、大きな重心に引かれる(p.335)
自由な立場で働く人が増えると、協業しやすいプラットフォームを作った企業に才能が集まってくるんですね。
では。