【本】ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル ☆☆☆☆☆

野口悠紀雄 新潮社 2005/9
 週刊新潮で連載されていた「21世紀のゴールドラッシュ」をまとめたもの。ビジネスモデルの教科書としても面白いですが、IT論、日本論としても、深い議論があります。
 ビジネスモデルの教科書として読めば、面白いのは、ゴールドラッシュで儲けたのは、金を掘った人でなく、その採掘者に必要なものを提供した人ということです。


 金の第一発見者のサッターは、この大発見にもかかわらず、「農場」というビジネスモデルから撤退できず、チャンスを活かすことができませんでした。
 最初の成功者、サム・ブラナンは、金採掘に必要な道具を独占することで利益を上げました。
 第2の成功者リーバイ・ストライスは、デニム地のズボンを売って利益を上げましたた。
 第3の成功者ウェルズ・ファーゴは、輸送や金融サービスを提供して利益を上げました。
 このような、ビジネスモデルを考える教科書としても、面白いのですが、野口先生が言いたかったのは、むしろ、この教訓に照らした時の日本の現状でしょう。

 ここ(カルフォルニア)の人々が持っている意識は、コンプレックスとは全く違うものだ。反骨精神とも違う。同じことを目標として「追いつき追い越せ」というのではなく、目的そものもが違うのだ。(中略)
 日本に欠けているのは、まさにこの空気だ。
 もちろん、日本にも、権威や権力に対する反発はある。官僚制度に対する批判は、新聞や雑誌に登場しない日がないくらいだ。しかし、これらの多くは、反発であって、挑戦ではない。多くの場合に、批判者も心の底では同じものを望んでいるのだ。それが手に入らなかったから、権力に反発しているに過ぎない

として、
・「勝ち組」「負け組」と単純に判別できるほど、現実は単純ではない。
・地方は、できることなら小さな東京になろうとしている。
・法律の専門家が必要となると、ロースクールの設立に走る。
・そもそも、ベンチャー育成という考え方自体が自己矛盾に陥っている。なぜなら、ベンチャーとは、自力で未来を切り開く企業なのだから。
 と厳しい言葉が続きます。
 が、日本という国を離れて、改めて強まった祖国への危機感を感じます。

 様々な角度から、読み返したくなる名著です。

では(^^)/^