
遅刻してくれて、ありがとう 常識が通じない時代の生き方
トーマス・フリードマン 日本経済新聞出版社 2018/4
Thanksfor Being Late: An Optimist’s Guide to Thriving in the Age of Accelerations Version 2.0
『フラット化する世界』の著者による世界情勢分析。上巻では、”The Age of Accelerations”とは、現代が、テクノロジー、グローバリゼーション、気候変動という3つの力の変化が速い時代とを述べています。
テクノロジーについては、スティーブ・ジョブスからiPhoneを見せられたエピソード。iPhoneが革命的だったのは、容易に様々なアプリを操作できたところ。ジョブズの言葉はp.166
We are all born with the ultimate pointing device—our fingers—and iPhone uses them to create the most revolutionary user interface since the mouse.
それ以降、我々は多くの時間をスマホに取られ、じっくり物事を考えなくなりました。書名は、待ち合わせに相手が遅れたときの話から。
相手の遅刻がちっとも気にならないことに、ふと気づいて、私は言った「いや、やめてくれ、謝らないでほしい。それどころか、遅刻してくれて、ありがとう」
なぜなら、あなたが遅れてきたおかげで、自分のための時間をつくることができたからだとp.15
2007年以来、人類の接するデータ量(とその費用)は激変しました。p.166

グローバリゼーションは、たとえばp.236。
2005年に私が『フラット化する世界』を書いたとき、グローバリゼーションはかつては国が原動力だったと論じた-スペインが、”新世界”を発見したように。その後、企業が原動力になった-2世紀前のオランダ東インド会社や現在のアップルのように。そしていまは、これらのデジタル・フローのおかげで、すべての人間や主体ー小集団、スタートアップ企業、個人、多国籍企業-が、グローバリゼーションの原動力になり、東と西、北と南、南と南を結びつけるようになった。
結果、2000年代初頭にかけて高賃金で中スキルの仕事がなくなり、先進国の中間層が消えました。グローバリゼーションとテクノロジーが、必須スキルの水準を引き上げたためです。
下巻は、対策にも触れています。著者が本書のテーマソングと呼ぶ、Brandi Carlile の”The Eyes”
台風のような乱気流の中を生きる我々に、一息つけるのは、台風の目だけなのでしょうか。人工知能の発達という新たプレッシャーが加わった私たちが、人並みにクラスには、協力、共感、柔軟性といったロボットに欠けたスキルを身につける必要があります。そのヒントとして、著者の故郷であるミネソタが紹介されていました。「多元的価値の共存を認めたコミュニティの力」の例が紹介されています。
マイノリティであったユダヤ人は、セントルイスパークに集まって住んでいました。様々な人材がこの地から生まれています。
- コーエン兄弟(映画監督)
- ノーマン・オーンスタイン(政治家)
- アル・フランケン(コメディアン、政治家)
- シャロン・イスビン(ギタリスト)
- ボビーZ(ドラマー)
- マーク・トレストマン(シカゴベアーズのヘッドコーチ)
- マーがレッド・ストロベル(歴史家)
- ダン・ウィルソン(歌手)
- ペギー・オレンスタイン(作家)
- アラン・ワイズマン(ジャーナリスト)
- マイケル・サンデル(ハーバード大学教授、隣町)
こういう人間のエネルギーを解き放った原動力がなにであったのかは、いまになってはだれにもわからないだろうが、多元的共存と関わりがあるのではないかと、私はひそかに考えている。p.22
ブレクジットやトランプ現象との関係については、p.374
アメリカとEUの人口の一部にとっては世界はたしかに”速すぎる”ようになった。加速の時代は、過度の自動化や移民や競争、そして無数の新しい考え方や社会慣行の流れをもたらし、人口のかなりの部分が、よりどころを失ったと感じた。田園地帯に住む教育水準の低い労働階級の白人に、ことにそれが顕著だった。
オフィスワーカーの場合も、”並であること”が突然終わりを告げ、難問が湧きおこった。ただ一所懸命に働き、ルールに従うだけでは、並みのミドルクラスの生活様式を確保できないことを、だれもが知った。仕事を得て、その仕事を手放さないようにするには、一生ずっと学びつづけなければならない。
加速の時代に、コミュニティが単一文化から混合文化へと急激に変わった例として、アンドルー・サリバン氏と兄とのやりとりが印象的でした。
イギリスに移民が流れ込む速さが、度を過ごしている。学校も病院も定員を超え、交通システムにも無理がかかっている。住宅不足は深刻だし、国の変容があまりにも急なので、住民の多くはそれにまったく気づいていない。移民は管理できるレベルに減らすべきだと、兄は考えている-それに先ごろの選挙で保守党に投票したのは、そういう公約だったからだ。移民は年間数万人に抑えると、保守党は約束した。しかし、政権の座についてから1年たっても、まったく減らなかった。年間60万人以上の移民がイギリスに入国していて、EUからの移民は30万人に近く、終わりは見えていない。(中略)1992年のEUからイギリスへの移民は、わずか4万4000人で、2003年でも6万6000人だった。 p.375
しかし、著者は、アメリカのコミュニティを回ってみて、うまく行っているところと、そうでないところが混在していると指摘。
It’s the community, stupid.
と述べていました。
論点が多く、消化しきれませんが、参考になりました。