【本】英EU離脱 日本は円高に対処できるか

英EU離脱 日本は円高に対処できるか

野口 悠紀雄 ダイヤモンド社 2016/10

円安になってしまいましたが、今年の世界政治のビッグイベントを経済学の視点から確認するのは、有意義でした。

EUの基本理解は、こちら。

EUは関税同盟である。つまり、加盟国間で関税をかけずに自由な貿易を行う取り決めだ。

 しかし、EUは最初から、単なる関税同盟ではなかった。EUが設立されてのは、ヨーロッパが2度にわたる世界大戦の戦場となったことから、このような悲劇を繰り返さないためだった。p.54

イギリスが目指してるのは、関税同盟の利益を享受しつつ、政治制度は拒否することでした。ローマ帝国との比較が印象的でした。

 EUはヨーロッパを統一した古代ローマ帝国を原題に再現したものだと考えられることもある。しあし、ローマ帝国はEUはとは似て非なるものだ。ローマ帝国とは、都市国家連合体であり、各年には大幅な自治権が与えられていた。中央官僚はわずか300人しかいなかったといわれる。p.38

日米2年国債利回りとドル円相場のチャートは、p.68。実質ベースでも、9月までは、ネガティブだったんですね。

Bloomberg - Are you a robot?

直近はドル高になってしまいましたが、名目ベースでも、大統領選挙投票日までは、100ベーシスぐらいだったスプレッドが、145ベーシスまで開いていったのがドル高につながっているのがわかります。

p.73には、シカゴ商品取引所の円先物のポジション・チャートがあります。

本書執筆時点(2016年7月)では、JPYロング優勢でしたが、11月以降はJPYショート優勢切り替わっています。

購買力平価ベースでのドル円相場のチャートは、p.79。

http://www.iima.or.jp/Docs/ppp/doll_yen.pdf

11月以降は、これも、ドル高の限界の方に振れてしまいました。

著者の金融政策へのスタンスは、明確です。

 必要なのは、目標時点の延期や物価指標の見直しではなく、インフレ目標そのものを撤廃し、逆に、物価の下落を促すことである。p.125

財政政策の限界も指摘。必要なのは、構造改革により潜在成長率を上げることとしています。

財政拡大や金融緩和などのマクロ的拡張政策は、経済の成長率が潜在成長率を下回っている場合に、それを潜在成長率にまで引き上げることを目的とするものである。(中略)必要なのは、財政拡大ではなく、潜在成長率を高めることだ。p.165

おっしゃるとおりですね。

では。