【本】プレミアム戦略

プレミアム戦略

遠藤功 東洋経済 2007/12

早大教授によるプレミアム論。もともと、オペレーションのコンサルタントだっただけに、現場を見た結果、日本企業の生き残り方法としてのプレミアム戦略というのが伝わってきます。

プレミアムは、次の式で定義しています。p.80

プレミアム=機能的価値(Functional Value) × 情緒的価値 (Emotional Value)

前者が見える価値であるのに対し、後者は見えない価値。前者で圧倒的にレベルの違う価値を提供し、かつ見えない部分で、共感を得られなければ、プレミアムは得られません。究極のモノづくりに、究極のストーリーぐくりが融合して作り出されるのがプレミアム(p.94)であり、日本には、後者が欠けているというのが論旨です。

p.45では、プレミアムを生むには、マーケットの土壌が大切だとして、原研哉氏のコメントを引用しています。

香港で食べる中華料理は、美味しいが、東京のそれはさほどではない。それがシェフの技量の問題であれば、腕のいいシェフを 香港や中国から招けばいいし、事実そういうことも行われているはずである。しかしこのギャップはなかなか埋まらない。なぜなら、問題はシェフではなく顧客 だからである。

日本には、プレミアム商品を購入する市場があることを指摘しながら、プレミアムブランドが(少)ない。その例として、ピクテ・プレミアム・ブランド・ファンドが紹介されいています。組み込み候補の代表銘柄は、BMWなどです(こちらの資料参照)。たしかに日本企業は、入ってませんね。

プレミアムの8原則は、P.159以降に述べられています。

  1. 作り手の主観こそがプレミアムの命
  2. 常にモダンでありつづけること
  3. 派手な広告・宣伝はしない
  4. 飢餓感・枯渇感を醸成する
  5. 安易な拡張は行わない
  6. 販路を絞り込む
  7. 細部にこだわる
  8. グローバルをめざす

それに対し、日本のプレミアムを阻む4要素は、以下の通り

  1. 舶来振興
  2. 御用達制度の廃止
  3. 大量生産・大量販売という産業政策
  4. デザイン性より機能性重視の思想

しかし、日本からプレミアムが生まれない最大の要因は、作り手の欲望の室が低いことだとしています。p.142 フェラーリのデザインも担当した奥山清行氏のコメントは、次の通り。

『日本人は高級な生活を知らないから高級車が作れない』と言う人がいるが、高級な生活を知らなくても、自分というものをきちんと持っていて、判断基準がしっかりしている人なら、想像力の助けによって高級なものをイメージすることができる。一番大きな問題は、生活レベルではなく、判断基準の下になるべき自分がいないことである。

資源高騰で、ますます、バリューが川上にシフトする現代、日本のメーカーがプレミアム戦略を再考することは、意味があるのではないでしょうか。ソニーのQUALIAのポスト・モーテムを読んでみたいものです。

では(^^)/~