【本】100%ソニーミュージック ☆☆☆☆

100%ソニーミュージック―アーティストの想いを伝えたい
100%ソニーミュージック
ソニーミュージックオフィシャル編集チーム 2006/3 Nanaブックス
 SMEのCDのジャケ写はAmazonで出てきませんが、この本は出ますね(笑)。こんなに格好いい社内報、見たことないなというのが感想です。


今から20年前、KDD(現在のKDDI)で働いたときに、初めて社内報を見ました。社内の人にしかわからない部署の紹介があり、会社って内向きだなぁと思いました。
 この本は、社内の人が社内の人のことを書いているにもかかわらず、実に面白いです。これがソニーミュージックの底力なんでしょうね。
 資生堂のシャンプーだからTSUBAKIを買うことはあっても、ソニーミュージックだからその新人のCDを買うことはないですね。中島美嘉がワーナーに移っても、ファンは彼女のアルバムを買うことでしょう。
 それでも、レコード会社の力がなかったら、彼女が生まれてなかったんだろうと思わせるのに十分な内容になっています。
 経営組織論でいえば、ソニーミュージックのように、人事、オペレーションなどをプラットフォームとして共通化し、マーケティング(制作・宣伝・販促)をレーベルカンパニーとして独立させるというのは、非常に参考になります。
 30代の社長を作り出し、平井堅、Chemistryなどのヒットを次々に出してきたのは、多くの企業が理想とするところではないでしょうか。業界トップのシェアを取りながら、社員の創造力を維持するのがどれほど大変かは、それぞれの業界のトップが痛感していることだと思います。
 しかし、そのSMEでさえ、市場の変化によって挑戦を受けています。ひとつは、Googleの出現ですね。博士号を持つようなSuper Smartが、すき放題仕事ができるようにすることによって、ワオと思わせるサービスを次々に作り出している。SMEのように分社化しなくても、社員の個性を生かす企業が出てきました。
 もうひとつが、デジタル化の影響ですね。YouTubeのようなサービスが、レコード会社のあり方を変えようとしています。P.10にソニーミュージックと音楽ビジネスの流れという図があります。作家契約から流通にいたるまでのビジネス全体をチャートにしてあるのですが、デジタル化によって各部分が大きく変化していくと思います。
 それは、SMEの元社長、丸山さんの言葉
「配信もいいけどインターネットを新しい物を生み出す道後として使おう」に集約されていると思います。(梅田望夫さんが、「ウェブ進化論」p.108で取り上げています。)
 ソニーミュージックが、ソニーミュージックであるのは、まさに人の力によるものなのですが、グーグルに代表されるネット企業は、人を介さずにモノゴトを済ませてしまう企業です。CDの時代までは、ソニーミュージックの今の体制が、必要かつ十分な人材のはり方でした。今後はどうなるんですかね。「100%ソニーミュージック 2.0」が、どうなるか楽しみです。

 では。

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