【本】大世界史

大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 

池上 彰, 佐藤 優 文春新書 2015/10

新・戦争論』の続編。私が入社した頃とは世界情勢が完全に変わってしまったことを確認できます。佐藤氏による「おわりに」は、こちら

世界史を学ぶ具体的な視点が示されているのがp.26

中東は、世界の中心です。文明発祥の地ですが、人類史が始まって以来、中東こそ、常に「世界史大転換の震源地」でした。ここに端を発した変動が、その後に全世界に大きな影響を与える。

その中東が混乱しています。

イスラエルのアマンという軍事インテリジェンス機関が中東の情勢報告を首相に上げたのですが、その結論は「分析不可能」でした。p.28

アラブの春の分析。

アラブの春には民主主義をつぶす機能しかなかった。政治的にイスラムと民主主義はなじまないことがはっきりした。民主化のチャンスはアラブ諸国では、近未来においてはないだろう。p.49

アラブの春以降、アラブが弱体化し、非アラブのイラン(ペルシャ帝国)とトルコ(オスマン帝国)が台頭した。

そのトルコの動きは第3章。エルドアン大統領が進める権力集中と、イスラム国の中国への影響は参考になります。

第4章の中国では、膨張する国という概念を紹介しています。収縮する国は、アメリカ、日本、アラブ、膨張する国は中国。

第5章は、欧州分析。ギリシャ問題については、その国の成り立ちを解説p.105

1829年に、古代ギリシャの滅亡以来、1900年ぶりに独立を果たすのですが、国民は、DNA鑑定をすれば、トルコ人と変わらない。アナトリアにいた清教徒をギリシャに移し、ギリシャにいたムスリムをアナトリアに移すという住民運動を行って、人造王国を仕立てあげたのです。

こうした国の成り立ちに加え、東西冷戦の事情もあって、ギリシャを一方的に避難するのが難しいのもわかります。

ドイツの分析で新鮮だったのは、以下の点。

戦後のドイツというのは、それまであった国の重要な要素を半分失ってしまったのです。もともと土着のドイツ人知識人と、ユダヤ人知識人によってつくられて国だったのが、戦後、後者のユダヤ系の部分を失ったのです。p.116

エリック・ホブズボームの「短い20世紀」を紹介。

ドイツという新興の帝国主義をいかに封じ込めるか。そのために世界は必死になった。ソ連という国家もこの仮定でできた。第1次対戦と第2次対戦は、ひとつながりの「20世紀の31年戦争」とみなすべきで、2つともドイツをめぐる戦争で、結局のところ、ドイツを封じ込めることはできずに終わった。p.130

第6章は米ロ分析。ヒラリーが当選した際には、好戦的になると予測。

そもそもアメリカにとって、戦争は、一種の公共事業のようなところがあります。定期的に行う必要がある。そろそろ、その周期がきている感じがします。p.144

など、とても勉強になりました。

では。