【石ころ】ベルギー

バスは、100km/hのまま国境を超えた。Googleマップの「現在地」は、オランダからベルギーに入ったが、乗客はスマホを見つめたままだ。

 欧州・陸路での国境越えは、20年ぶり。1999年にポーランドからドイツに入る際には、車掌が席に来てパスポートを点検していた。スタンプは、汽車マークだったように記憶する。2020年のオランダ→ベルギー国境では、出国ゲートはなく、手荷物検査もなしで通過した。

 この素晴らしい制度が当たり前になっていた欧州人は、コロナ禍で、国境の重みを思い出すことになった。シェンゲン条約国が次々に国境を閉ざし、人々の行き来ができなくなった。イタリア、スペインが非常事態を宣言した3月、他の国々は、まず国境を閉じて自国民を守った。
 3ヶ月の戦いを終え、6月15日からは、EU内の行き来が検疫なしにできるようになり、私も隣国に行けるようになった。

 アムステルダムからブリュセル行のバスは、片道17€。マスク着用が義務付けられた他は、大きな変化なし。体温点検も、パスポートチェックもない。アムステルダム市内を走る通勤列車は、ピーク時でも空席が目立ったままだが、ブリュッセル行のバスは満員だった。

 アムステルダムから、ブリュッセルまでは、ノンストップで2時間半。どこまでも畑が広がり、風車の向こうには、牛が寝そべっている。
 あまりにあっけない国境通過に、シンガポールからマレーシアへの国境越えを思い出した。時には3時間の渋滞になるため、家を出る時刻を考えるところから始まる。ようやく出国ゲートに着いたら、出国税を払う。検査官にパスポートを渡し、出国審査。手荷物検査を経て、シンガポールを出国。

 国境の橋を渡ったら、また渋滞。マレーシア側の入国ゲートで、入国税を払う。入国審査、手荷物検査を経て、路肩に車を止めて一休み。スマホのSIMカードを差し替え(あるいは、SingTelのローミングを確認し)、ナビを設定し直す。最寄りの両替商により、シンガポール・ドルをマレーシア・リンギットに換えてようやく旅が始まる。

 ベルギー国境では、入出国審査不要。荷物検査なし。スマホは、Vodafoneのデータ定額がそのまま使える。通貨はユーロのまま。パン屋で1.1 ユーロ(1€=120円、130円)のクロワッサンを買うときに、オランダのデビット・カードがそのまま使える(小額は暗証番号入力不要)。
 
 対馬と釜山間で、同じ制度ができる。対馬から下船すると、入国審査なしで上陸。ドコモの定額データ通信がそのまま利用できる。共通通貨、Yen + Wonで「YON」?が使えるので、冷麺の代金は、みずほのデビットカードが使える。

EU本部

 現在の冷え切った日韓関係ではなく、韓流ブームの時を想定しても、そんな制度が実現すると思えない。オランダはナチスに5日で占領され、20万人の犠牲者が出た。国境を防衛できなかった代償を知っていると思うと、この偉業がわかる。
 Googleで「欧州」と検索すると、復興基金を巡る意見対立を囃し立てる記事を目にする。オランダに住んでいる私からすれば、これほど素晴らしい制度を実現したのだから、それぐらいの内輪もめは、小さな問題と感じる。たとえ、コロナ復興基金が揉めても、トラックは、今日も国境はを100km/h でバンバン行き来しているのだから。

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