【本】日本のソブリンリスク

日本のソブリンリスク―国債デフォルトリスクと投資戦略

土屋 剛 東洋経済新報社 2011/6

バークレイズ・キャピタル証券のアナリストによる国家の信用力分析。欧州危機まっただ中、ソブリンリスクについて頭の整理ができました。

ソブリン・リスク(sovereign risk)については、p.22の「グローバルベースのアセットクラスと保有者の関係」と、p.23の「主権国家による借金踏み倒しの累計」で容易に理解できました。国家の場合は、狭義のリスク(額面毀損、条件緩和、リスケ)の他に、広義のリスク(ハイパーインフレ、預金封鎖、大増税、通貨安)がありえます。第1章前半では、この図を使って、パターン別のリスク顕在化を整理しています。後半ではソブリンリスクを歴史的に検証。欧州債務問題を時間軸で捉えることができます。
印象に残るのは、先進国の高齢化。これが、先進国プレミアムの発生に至る可能性を指摘しています。

第3章では、政府債務の持続可能性を議論しています。プライマリ・バランス、ドーマー条件を振り返りつつ、1997年の財政金融研究所の財政シュミレーションを分析。現実は、前提条件より悪くなっているのに、なぜ持続しているのか。

「日本財政破綻」の予測が裏切られてきた最大の理由は、「完全雇用」、「クラウディング・アウト」といった古典的な経済学の考え方が該当しない経済状況が生まれたことである。端的に言えば、過剰貯蓄が永続的に存在することを伝統的な経済学は想定してはおらず、一時的な過剰貯蓄は実質金利の低下によって縮小均衡に向かう「はず」であった。p.111

第3章後半では、財政赤字の原因を俯瞰。日本政府は、政府消費支出、政府人件費、公的固定資本形成のいずれを見ても大きな政府ではない。「低受益、超低負担」であるがゆえに、赤字となっていると総括。
第4章では、ソブリンリスクの行方を予測。p.140にシナリオ図が示されている。タイプ別発生確率は以下のとおり。

  • 狭義のデフォルト 12%
  • ハイパーインフレ 7%
  • 財政状況はさらに悪化するが破綻しない56%
  • 一定の財政収支改善が実現され安定する 20%
  • 財政再建完了5%

 頭の整理はできました。さて、私は、どう行動しましょうか。

タイトルとURLをコピーしました