起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと
磯崎 哲也 日本実業出版社 2010/9
磯崎先輩のベンチャー・ファイナンス講座。初心者にも読みやすいので、起業して上場を目指す方におすすめです。
改めて、MBAでFinancing Business Ventures のクラスをとった衝撃が蘇ってきました。日本に住んでいると資金調達があまりに借入なので、株式で調達することに気がつかなかったりします。2000年当時でしたので、IRRも80~100%。預金金利が0.1%の国からすると信じられないリターンを求める投資家がいて、それに応える起業家がいる。
しかも、その起業家というのも、ただのオッサンであることが多い。「申し訳ないけど君は成功しないと思うよ」と思うオッサンが、掃いて捨てるほどやってきては、起業を成功させようとする。逆に起業を考えない自分がおかしいのではないかとすら思うようになりました。
本書では、事業計画の立て方の他に、企業価値の計算方法、資本政策の作り方などもカバーしてあります。MBAの教科書というよりも、実際に事業を立ち上げる人の注意点が丁寧に取り上げられており、親切な作りになっています。たとえば、「エレベーター・ピッチ」p.117。私も授業でやらされました。日本人ってつくづくこういう訓練してないよなぁとわれながら情けなくなったのを思い出します。
一方、ストックオプションや種類株の話は、MBAの授業ではなかったですね。そういう意味ではレベルも高いです。
本書のよさは、p.196の図表5-5に表されています。実は起業には、ビジネスセンスに加えて、法律、労務、金融、会計、税務などの知識が必要なんですが、それぞれの専門家はいても、全体を俯瞰出来る人は本当に少ない。磯崎さんは会計士ですけど、この全てに通じているからこそ、全体を語ることができ、若い人から「読みやすい」と言われるような言葉で表現できるのです。
単純に資金調達したいんだという場合には、Prof. Dileep Raoの”Financing Business Workbook“のように、スプレッドシートや、調達の一覧表のようなマニュアルになっている方が便利かもしれません。(翻訳しろと言われて、できずに今日まで来ております….)
次回は、起業の文化論を読んでみたいですね。私も、起業のお手伝いを初めて5年になるんですが、日本での起業は、単純にキャピタル・ゲインの力に任せるだけではダメかもと思い始めております。日本は、富士通、SONY, SCE, DoCoMoと子会社が面白いことやって世界に出て行くパターンが多いですね。この辺が引っかかっております。
では。
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