野口悠紀雄 ダイヤモンド社 2014/6
仮想通貨が現在の通貨体制に与える影響を分析した本。野口先生は、今現在も、最先端の経済事象に取り組んでおられるということに、刺激を受けます。
仮想通貨の代表として取り上げられているのは、ビットコイン。Wikipedia の定義は、こちら。
公共トランザクションログを利用しているオープンソースプロトコルに基づくPeer to Peer型の決済網
ブロック・チェーンとは、P2Pネットワーク上に保存されているの過去の全取引データ。ビット・コインには、中央銀行のような絶対的な管理者が存在せず、Peer to Peerのネットワークに保存されるこのデータが、取引の有効性を担保しています。 現状では送金時のみの利用に留めて、長く手元に留める資産や投資として使うことには否定的でした。
ビットコインの支払いに対応しているサイトの例は、Overstock.com。マップは、こちら。日本での普及はこれからです。
注目の送金費用については、p.59。
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0.01BTC以上の取引は無料。なお、BTCはビットコインの単位で、最近では1BTC = 460ドル程度。従って、5ドル程度以上の取引なら無料になるわけだ
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ソレ以下の取引の手数料は場合によって違うが、典型的な場合は0.0001BTC程度。これは、0.5セント程度だ。つまり、5円程度である。
なお、ドルなどの現実通貨と両替する場合には、そのコストがかかる。どの程度かは両替所によって異なるが、普通は1%程度のようだ。
送金費用が下がることによる直接的な影響は、例えば銀行。
2012年の全世界貿易量は約1500兆円だ。仮に為替スプレッドを含めた銀行の手数料がこの4%であるとすると、60兆円になる。この1割がビットコインに移行するだけで、銀行の収入は6兆円失われる。p.30
仕事柄、気になったのは、飲食店への影響。
「サンプルのページ」 にあるリストからレストランを選択すると、メニューが見られる。購入する項目をチェックしてカートに入れる。そして、支払いをビットコインで行う。
スマートフォンが普及したので、こうした使い方が出来るようになった。このシステムはレストラン自らが作るのではなく、Menufyが提供してくれる。 p.56
ここまで読み進めてくると、まえがきの言葉が蘇ってきます。
なぜ仮想通貨が「東方三博士の来訪」なのか? それは、仮想通貨がIT革命の第3の贈り物であるように思われる身体。第一はPCであり、第2はインターネットである。これらはすでに世界を大きく変えた。ただし、これだけでは十分ではなかった。経済活動にはつねに送金という行為が伴い、これについて従来の体制が続く限り、先に述べた「産業革命以前への回帰」は、完全な形では実現シないからである。しかし、いま、コンピュータ技術の結晶である新しい通貨が、世界を換えようとしている。p.8
具体的には、まず、ハイエクの貨幣自由化論の実現があげられます。
フリードリッヒ・フォン・ハイエクが『通貨の非国有化』(Denationalization of Money)で正しく指摘したように、グレシャムの法則が成立するのは、悪貨と良貨の交換比率が法律によって固定されている場合だけである。両者の交換比率が変動するのであれば、良貨は迅速に悪貨を駆逐する。
最初は、経済学的な変化が注目されますが、その影響は、広範囲に渡ります。
第2章では、ビットコインについて、詳細な解説があります。その中核は、「プルーフ・オブ・ワーク」「ビザンチン将軍問題」を解決たことにより、管理主体のないP to Pのシステムを実現しました。ブロックチェーンの技術によって、誰も管理しないシステムが、にうまく機能しています。これは、はじめとのことで、コンピュータサイエンスの大きな革新とのこと。
新聞だけ読んでいると、何が起こっているのか、見誤りますね。
では。
【参考】
http://diamond.jp/category/s-noguchibitcoin