【本】不思議の国のM&A

不思議の国のM&A―世界の常識日本の非常識不思議の国のM&A―世界の常識日本の非常識
牧野 洋 日経 2007/8

 元日経記者によるM&Aルポ。日本のM&A事情を理解するのに非常に役立つ1冊です。学者のように事例を分類するわけでもなく、週刊誌のように買収劇をおどろおどろしく書くわけでもなく、バランスがよくとれています。


 本書の主旨は、次の通り。 

グローバル化の時代に、M&Aを避けていたは競争に勝ち残れず、結果として国の富も増えないだろう。そのためにも、M&Aに普通の市場メカニズムが働くような環境を作り出す必要がある。欧米流でもなく日本流でもない、価格を基準にして商品が売買されるような普通の市場メカニズムである。p.3

 参議院選挙以降、人気のない市場原理ですけど、国の富を生むのは企業であり、その企業に活力を与えるのはM&Aなんですね。そこで重要なのは、あくまで価格(の透明性)だという主張に、大きくうなずいてしまいます。
 UFJのくだりでは、日本の大銀行が、価格が明示されないまま、売買されようとした様子が描かれています。当事者同士が本来はM&Aのプロなので、なおさら日本社会の特徴が浮き彫りになっています。
 株式交換方式と現金買収方式の違いも、クリアに理解できました。価格が低い買収者と組んだ方が、「長期的に企業価値を大きくする」といえるのは、株式交換の時だけなんですね。現金買収の場合には、そこで投資先との関係が切れるので、示される価格(プレミアム)がすべてになります。
 日興-シティでニュースになっている三角合併についても、第1章で詳しく取り上げています。 

実は、「三角合併」という言葉が一般的に使われるのは日本だけだ。日本でも当初は「株式交換」という表現が使われていたが、いつのまにか三角合併に取って代わられた。「三角合併」とは、法律の専門家が使う用語であり、欧米では新聞紙面などに登場することはない。厳密には三角合併であっても、「株式交換」と表現される。p.53

 この三角合併についての拒否感は、p.57のチャート「クロスボーダーM&Aに占める株式交換の割合」に示されていました。
クロスボーダーM&Aに占める株式交換の割合 
 2006年、日本企業によるクロスボーダーM&Aが445億ドル。そのうち株式交換によるものは0.89億ドル。1%もなく、ほぼない状況。
 一方、生々しい現場の声も拾っています。p.232では、村上氏が東証で会見を開く前の会話が収められています。
 
 今後、日本のM&Aは、どこに行くのでしょうか。p.234に孫社長のコメントが紹介されています。 

市場が便利になったら新しいルールも作らなければなりません。自動車が誕生すればあちこちで事故が起こる。事故を防ぐには交差点に信号を設置し、酔っ払い運転者から免許を剥奪することなどが必要になる。しかし自動車そのものを悪としてはいけません。ルール違反が多いのは社会が未熟な証です。拝金主義への批判もあるでしょうが、若者が一攫千金を夢見て挑戦するのは悪いことではありません。挑戦を許容してこそ国の活力が生まれるのです。

 では(^^)/~

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