2020年の日本人―人口減少時代をどう生きる
松谷 明彦 日経 2007/6
大蔵省出身の政策研究大学院大学教授による日本経済論。2020年にスポットを当て、人口動態から問題点をあぶりだしています。
そういえば、9/29(土)の日経に、グリーンスパン元FRB議長のコメントが載っていましたね。
日本経済について唯一触れていたのが、人口問題/外国人労働者の問題でした。ほかのさまざまな予測とは違い、人口動態は、ほぼ間違いなく起こることなので、真剣に受け止めないといけないと思いました。
以下、印象に残った部分です。
2020年の日本経済が利用し得る労働力、すなわち「総労働時間」は、05年の81.1%の水準んにまで縮小することになる。(中略)高度成長期の1960年から73年の石油危機までの13年間の増加率は、5.0%であり、バブル経済を含む80年から90年までの10年間の増加率は9.7%だった。p.74
まずこれから2020年ごろにかけて、35歳未満の若年労働者が急激に減少する。05年からのわずか15年間で25.3%もの減少である。p.82
こうした前提に、いかに質を改善するか考えるわけですが、R&Dについては、
日本は、世界に存在するほとんどすべての商品について国産品が存在する唯一の国であるといってよい。(中略)そこまでリソースを分散させたのでは、世界に通ずるような成果は望めまい。
という認識です。
地域格差については、興味深い指摘がありました。
東京都をはじめとする大都市では、働く年代の人口に対する高齢者の比率が、地方地域に比べ、はるかに急速に、かつ大幅に上昇するのである。それは今後、大都市では増税の可能性が極めて高く、かつそれが大幅なものとならざるを得ないことを意味する。p.129
ということで、東京も安泰ではありません。しかも、その東京の資本の生産性が低下しています。第10図 東京と全国の資本の生産性の推移。著者は、近年のビル建設ラッシュが、それに見合う付加価値を生み出していないと指摘しています。
一方、地域振興についても、興味深いデータが紹介されていました。
地域経済の基本は製造業でならないと述べた。なぜなら、地方地域にとってはそれこそが、自力で域外から所得を獲得できる産業だからである。そして域外からの所得が大きければ、域内に持つことができる第3次産業もそれだけ大きくなる。p.157
第8図に各地域の一人当たり製造業生産高と公共事業比率掲載されています。滋賀は、一人当たりの製造業生産高が180万円近いのに、沖縄は20万円に満たない程度。この差が公共事業への依存度につながっています。
今後、年金などさまざまな議論が進むと思いますが、人口動態の正確な理解が、その基礎になることがよくわかりました。
では(^^)/~
【参考】
・朝日新聞社のシンポジウムのページ