住宅ローン、変動金利が7割なのですね。
私が入行したときは、たしか、住宅ローン=固定金利だったと記憶していますが、いつのまにかそうした常識がなくなったようです。日銀の金融政策が、日本人を変えてしまったのでしょうか。
これは、日銀の超低金利政策の負の面のひとつです。日銀総裁の後任人事も取り沙汰されていますので、総括する時期なのだと思います。
第1に、日本の停滞は少子高齢化によるもので、金融政策で解決できるような、ヤワなものではなかったということです。私も、介護世代になって実感ししたが、親の世話をみながら、自分の報酬を毎年5%増やし続けるのはキビしいいです。こんな当たり前のこともわからなかった自分を反省しております。
第2に、デフレの原因は、中国でした。日本の30分の1の賃金で数億人が、西側に入ってきました。それがなければ、ユニクロのフリースも、ダイソーもなかったわけです。中国の労働人口が2015年から減少に転じ、コロナでサプライチェーンがおかしくなり、プーチンが戦争を始めたら、インフレになりました。それは低金利を2年続ければ、物価は上がると言った黒田総裁が一番実感しているのではないでしょうか。
今回のインフレが循環要因ではなく、構造要因によるものだとすると、他の中央銀行に出遅れた日本は結構な授業料を払うのではないでしょうか。
第3に、物価上昇率を「コアコア」で見るのはよいとしても、国民への丁寧な説明は必要なのではないでしょうか。地方で自動車通勤している人は、光熱費と食費の値上げで困っているはずです。こんなに急激に上がった場合には、「コアコアには含まれない」で済ますべきではないでしょう。
コアコアに含まれる通信費は、菅首相の政策で下がったので、特殊要因として、勘案すべきだと思います。
ざっと見てくると、10年に及ぶ低金利政策は、リスクとリターンが見合わない政策だったと思います。潜在成長率が下がってしまった日本にはプラスだったでしょうが、その効果は限定的でした。逆に過分な円安を招き、資源高になってしまいました。円安で日本の没落を感じるデータが今後も続くことでしょう。地銀の経営が立ちいかなくなったり、住宅ローンの変動金利が7割になるなど、金利の感覚もなくなってしまいました。財政の規律も甘くなり、補正予算を使い切れないようなことが常態化しました。日本政府の債務も増え、なにより日銀のバランスシートが劣化しました。
住宅ローンを抱える個人、年金にたよるお年寄り、借金のある中小企業経営者、日本政府、日銀までも利上げで困るようになってしまったら、どうやって利上げするのでしょうか。日刊ゲンダイが書くことがありすぎて困るほど、社会が混乱しないことを祈るばかりです。