
新・日本の時代(Japan Remodeled)
スティーヴン・K. ヴォーゲル, Steven K. Vogel 日経 2006/5
UCバークレーのヴォーゲル教授(『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のエズラ・ヴォーゲル教授のご子息)による「失われた10年」の分析。外国人の方が日本をよりクリアに分析してくれることがあるのですが、その典型のような本です。
総選挙は新しい自民党を誕生させたのである。新しい自民党は旧来の派閥や既得権益の集団ではなく、若い世代、都市志向であり、総理主導型である。(P.4)
景気回復に何が最も必要であったかという点に絞れば、答えは単純明快である。財政政策、金融政策、銀行規制の3つである。日本政府は金融緩和と銀行改革で成果を達成し、1997年当時の早すぎた増税といった財政政策の過ちをおかさなかったし、2000年当時のような早すぎた金融引き締めへの転換という誤りも繰り返さなかった。(p.7)
もし、小泉が記入資産の配分をより効率的にすることを企図したのであれば、民間の運用する投資信託などの多様な金融商品を、郵便局で販売することを認めれば十分であった。もし、高速道路建設の効率を上げることだけを狙うのであれば、新規の高速道路予算を削減し、その予算配分の監視を強化し、談合を取り締まるだけでよかった。しかし、郵政民営化・道路公団民営化は、共に自民党の権力構造を変革するための政治的な優先課題として、国民に提起する意味が大きかったといえる。
など、日本の新聞も、こう書いてくれれば、わかりやすいのになと思います。
また、よくあるドキュメント本と違い、要所要所で理論的なフレームワークを使って説明してくれています。こういう抽象能力は学ぶところが大きいと思いました。特に、日本経営がどのように変化したのかは、アメリカ以外の国と比較することで、より明瞭になります。
後半は、新生銀行、西友、ソフトバンクなどのケーススタディが掲載されていて、企業レベルでどのような動きがあったのかが理解できます。
今後、日本が進むべき道を、以下のように述べています。
政府は政治プロセスの透明性を高め、女性の均等機会の向上、社会のセーフティ・ネットを強化すべきである。また、独占禁止法の適用を強化し、電気通信分野のような基幹産業では競争促進策を実施すべきであるし、貿易、対内直接投資の一層の自由化も必要である。(中略)日本は優秀な学生の可能性を最大限に引き出すための教育改革が必要であろう。しかし、これによって、すべての日本国民に質の高い教育機会を提供することが犠牲になってはならない。地方自治体に地域の特性に応じた政策を実行する地方行政の自主権の拡大を認める必要があるが、その結果、地域間の不均衡をあまり拡大させることは望ましくない。
日本は雇用削減、M&A、社外取締役、ストックオプションといったアメリカ資本主義を象徴するような諸方策への志向を一定限度内にとどめるべきである(p.9)
総裁選に出る人は、このように政策のポイントをわかりやすく語ってくればと思いました。
では。