【本】シニアビジネス ☆☆☆☆

シニアビジネス―「多様性市場」で成功する10の鉄則
シニアビジネス
村田 裕之 2004/5 ダイヤモンド社
 
 先日ご紹介した、団塊・シニアビジネス「7つの発想転換」と同じ著者の本。著者は、アメリカのシニアビジネス専門家で構成されるシンクタンク「The Society唯一の日本人メンバー。豊富な実例を織り交ぜて、日本のシニアビジネスの問題点を浮き彫りにしています。この本の内容は、シニア市場でなくても参考になると思います。


 一貫しているのは、シニアはマニアということです。若い世代は、「年寄り」ひとくくりにしがちです。しかし、60年も人生を重ねてきた人たちには、何らかのこだわりがあり、それが多様性を生み出しています。ここを間違えるとビジネスとして成功しません。
 目次はこちら。終章がサマリーになっています。10の鉄則は、以下のとおりです。

 1.自分の顧客の「不」の解消を商品・サービスに転換せよ
 2.顧客の「声なき声」に深く共感して、サービステーマを決めよ
 3.自分の「祖父母」「両親」を喜ばせるつもりで品揃えを決めよ
 4.困った時はあの人に聞け、と最初に声がかかる「出張駆込み寺」になれ
 5.人間の感性が高まり、能力が発揮されるように「ハイテク」を使え
 6.職場に代わる「第三の場所」で「シャワー効果」を起こせ
 7.知的合宿体験により問題意識が近い人同士の「化学反応」を促せ
 8.互いの「背景知識」が「自然に深まる仕組み」をつくれ
 9.人間の最高の楽しみ「学び」を住まい方の中心に持ち込め
10.「個」と「集団」とをブレンドする「世話役」になれ

取り上げられているベンチャー企業は、以下のとおり。

カーブズ1.Curves
事業 シニアの女性向けフィットネスクラブ(P.28)
本社 テキサス州
特徴 世界最大のフィットネスチェーン。アメリカにある18,000のフィットネスクラブの3割にあたる5,400店
が同社のチェーン。
 顧客の平均年齢は50歳。
顧客のメリット
 ・男性に運動している姿を見られずにすむ
 ・「クイックフット」で気軽に運動ができる
 ・1回30分で運動が終わる
1回4時間よりも、1回30分を週3回。
 ・安い
   1ヶ月29?45ドル
 ・小グループで楽しく継続できる 

初めは、誰もがそんなニッチ分野はビジネスにならないと言いました。年配の女性はいろいろと要求がうるさくて、相手にするのが大変だと。でも、われわれには確信がありました。人が不満に思っていることにこそ、事業機会は隠れているものなのです。(P.36)

2.ホーム・インステッド・シニア・ケア P.37
事業 シニア向けの話し相手
売上は約421億円、ケアスタッフ数3万人、顧客数3万人
アントレプレナー誌のシニアケア部門1位

 セブンイレブン 鈴木会長の言葉(p.40)

POSを使うと、確かに売れ筋はわかる。しかし、売れなかった商品が、なぜ、売れなかったのかがわからない。売れなかった商品にこそ、次の事業機会が隠れているはずだ。

3.リフレピット・エネ
美容エステのワンストップショップ。

4.Gold Violin
事業 通信販売(年配者向けギフト)
社長 コニー・ホルキスト(Connie Hallquist)
アメリカン・ソサエティ・オブ・エイジングの2002年ビジネス・オブ・ザ・イヤー獲得
【年長者配慮型マーチャンダイジング】Elder-directed Marchandising
・スタイリッシュなデザインで、シニアの悩みを解決してくれる商品を販売
・独自の目利きで販売する商品を限定
・多くをアウトソースしているが、コールセンターは自前。
・新製品は、「フォーカスグループ」が目利きをする
・採用されたものは、QVCやAARPなどのチャネルで一気に販売

5.レ・コンシェルジェ(Les Concierges) P.100
事業 従業員のコンシェルジェとなることで、企業から対価を取る
・従業員一人一人に徹底したサービス
  父親が倒れたときにケア・マネージャーに連絡を取る
  母親の誕生日のプレゼントを推薦など

 日本だと、働きやすさの改善は、労使交渉だとか行政の指導が先にきますが、ベンチャーが解決にあたるのが、アメリカらしいですね。

6.マザー・カフェ・プラス p.111
事業 シニアのスターバックス 

大勢の人がいる職場は、上司、同僚、部下、取引先といった形での人的ネットワークが多数存在していた。また、職場の組織が業務上の機密から福利厚生の案内までさまざまな情報をどんどん「自動的に」提供してくれていた。
 しかし退職すると、このような人的ネットワークと情報の「自動的」なていっ今日がまったくなくなる。(P.120)

日本でも退職者の居場所が必要になるはずで、注意すべきは、以下の2点。
 イ)作法の訓練
 ロ)顧客の参加

7.エルダーホステル
事業 世界最大のシニア向け生涯学習サービス

8.ル・ティップ(Le Tip)
事業 会員制ビジネスクラブ(会員数1万人)
本社 カルフォルニア州サンディエゴ

9.ハイテクコネクト
事業 独立コンサルタント派遣会社。顧客の要望に応じて、最適な人材を必要な時に、必要なだけ派遣する。

 というわけで、シニア市場が、ベンチャー企業のフロンティアだということがよくわかりました。

 では(^^)/^