「都市型シニア」マーケットを狙え
山崎 伸治 日本経済新聞社 2005/2
シニアコミュニケーション(マザーズ:2463)の山崎CEOの著書。高齢化社会というと、年金などの「負担増」のイメージがありますが、新たなビジネスチャンスと捕らえた好著です。今まで見落とされていたターゲット層に光を当てたということでは、「ネクストマーケット」に似ています。
筆者の主張は、ひとことで「シニア」といっても、それは、あまりにも大雑把であり、細かな分析に基づいてセグメンテーションしていくと、様々な顔が浮かんでくるというものです。
まず、シニアを分析するには、「3つの軸」があります。
1.ライフステージ特性
年齢自体よりも、子どもの独立、退職、孫誕生といった人生のイベントをきっかけに変化する「ステージ」に消費が左右される。
2.世代特性
戦中世代、団塊世代などの年代の特徴で消費が変わる。
3.社会環境特性
定年制度、年金制度などが変わると、消費傾向に変化が出る。
次に、7つの消費意識があるのだそうです。
1.時間消費
2.循環人生
3.本物志向
経験が豊富なので、まがいものを見分ける力がある。マスコミ情報に載せられているのではないと主張したい。あくまで、自分の基準で選んだ店と言いたい。
4.横のつながり
会社という縦のつながりを超えて、地域やサークルといった横のつながりに強い関心がある。
5.安心志向
経済的な不安と健康に関する不安が、最大の関心事。これを取り除くことに意識が向く。
6.縁を重視
世の中に関わって生きたいという気持ちが強い。たとえば、旅行後の写真交換会。地方の特産品をネットで購入したりもする。
7.人生逆算の意識
人生の残りの時間から逆算して、今をどう生きるか考える。
そして、分析は、本のタイトルにもなっている「都市型シニア」に向かいます。面白いのが、最近気になるレストランは、イタリアンやフレンチだったりするんですね。さっぱりした和食とは限らない。
また、レストランで「味・価格」以外に気になることは、店員の態度、お手洗い、店舗内や食器類の手入れ・清潔さ、インテリアのセンスです。逆に、下位にランクされるものは、店員の数、メニュー表、テーブルメイキング、店内のレイアウトなど。
理由を考えてみると、シニアの女性は、長い間トイレを掃除してきたので、こういう点には厳しいんですね。また、人を見る目が肥えていますので、人がきちんとしていないところは、それ以外もきちんとしていないと考えます。
50代と60代の好みの差のくだりも、面白いです。たとえば、好きな音楽に差が出るんですね。60代はクラッシックやジャズを好む人の割合が高いのですが、50代は日本のポップスを支持する層が増えます。
シニアに好感を持たれる電子メールには、季節の挨拶があり、宛名はフルネーム。敬称は「様」 結びに健康に関する一文を入れる。と思わずうなずいていしまいます。
圧巻は、後半にあるご夫婦へのロングインタビューです。世代別にまとめられており、シニアといっても、ライフスタイルが違うのが、よくわかります。
1.ハッピーリタイアメント世代 (1933?38年生まれ)
倹約志向
男女の差は、問題にならない。
2.戦中世代(1939?46年生まれ)
戦前の教育を受けていない。
ジーンズをはき始めた世代。
3.団塊世代(1947?50年生まれ)
友達夫婦
外出する時に手をつなぐ。
4.ポスト団塊世代(1951?58年生まれ)
プライベート重視(個人志向が強い)
旅行相手でパートナーを選ぶ。
シニアを理解することは、戦後の日本経済を理解することに近いですね。日本は、戦後、急速な経済成長を遂げたのですが、人格形成する時の経済状況が、これほどまでに人に影響を与えるものかと思いました。
いろんな読み方ができる本です。
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