【本】団塊・シニアビジネス「7つの発想転換」☆☆☆☆

団塊・シニアビジネス「7つの発想転換」団塊・シニアビジネス「7つの発想転換」
村田 裕之 ダイヤモンド社 2006/1

 AARPの国際会議にパネリストとして招かれる村田さんのシニア市場のマーケティング本。非常に適切なケーススタディが収められており、シニア向けと限定しなくても有益でした。


 7つの壁とは、以下のとおりです。
(1)市場調査の壁
 綿密な市場調査をしても顧客のニーズがつかめない
(2)顧客開拓の壁
 せっかく確保した見込み客が実際の顧客にならない
(3)商品営業の壁
 せっかくよい商品をつくっても思うように売れない
(4)商品開発の壁
 団塊・シニア世代向けとうたった商品が売れない
(5)顧客維持の壁
 会員制サービスで入会した会員を引き止められない
(6)収益向上の壁
 多額の予算を注ぎ込んでも収益が一向に上がらない
(7)新規事業の壁
 社内で新規事業を立ち上げようとするときに生じる

第1章 市場調査はあてにするな
 表層的なアンケートよりも、アナログの直感の大切さに触れています。

サンフランシスコ郊外にあるハイテクコネクトという人材マッチング会社では、延べ200以上の企業からの依頼に対し、1500人以上の登録コンサルタントの中から最適な人材候補をリストアップするのに、データベースに頼るのではなく、一人の人間の「目利き力」に拠っています。(p.26)
 中高年向け雑誌はこれまで40種類を超えるものが出版されてきましたが、10万部を超えるのは、この「いきいき」と小学館の「サライ」しかありません。(中略)
 毎月発行する「いきいき」には読者からの意見を吸い上げる「ご意見はがき」というのが付いています。これが毎月何と5000枚以上読者から返信されるのです(p.27)。

 
 ユーリーグでは、このはがきを編集スタッフ全員が目を通し、雑誌を41万人の読者に対する「手紙」として考えているのだそうです。交際費を削っても、100人の専任オペレーターを配置して読者の声を拾い上げることが大切なんですね。
 P.30では、レンタカーのAVISの例が掲載されています。顧客に小型カメラを付けてもらい、表情や声の変化をトレースすることで、本当の顧客満足を追求。本当に顧客が求めていたのは、旅にストレスを取り除くことでした。それは、帰りの飛行機に間に合うかだったりするわけですね。
 エイビスは、レンタカーの返却場所にフライトインフォメーションを表示するディスプレイを設置するなどして、顧客満足度トップになったそうです。

第2章 商品を売ろうとするな
[新訳]経験経済 ここでは、商品の押し売りから「体験」を提供する重要性が語られています。
 B・J・パインII, J・H・ギルモアの
[新訳]経験経済からコーヒー1杯の価格の例を引用しています(p.39)。

 コーヒー豆の原価     1?2セント
 豆を挽いてスーパーで販売 5?25セント
 喫茶店で出すコーヒー  50?100セント
 高級レストランやエスプレッソバー 2?5ドル

第3章 商品に惚れた消費者に語ってもらえ
 ドイツのかつら会社スヴェンソン社の例が紹介されています。

 日本の売上高 52億円(2006年3月連結)
 使用継続率 97.5%
 顧客年齢層 20?80代

 同社は、ほとんどテレビコマーシャルを流さず、口コミで顧客を獲得しています。男性のかつらアドバイザーの7割が、同社の顧客というのは、なるほどなぁと思います。

第4章 売れる商品は顧客につくってもらえ
 シニア向け商品がつきあたる「商品開発の壁」として3つの原因をあげています。
 (1)商品の質がターゲット顧客の求める水準に達していない
 (2)内容がてんこ盛りで、他との差別性がぼやけてしまう
 (3)「中高年はこう」と決めつけた商品になってしまう

 確かに、ほら便利でしょうというサービスが多いですね。対策としては、団塊世代が何かを買おうと意思決定する時の要因(p.92)をしっかりとらえることだそうです。

 (1)加齢による肉体の変化
 (2)本人のライフステージの変化
 (3)家族のライフステージの変化
 (4)嗜好性の変化
 (5)時代性の変化

 具体的には、顧客が参加・運営する仕組みを持つのだそうです。
以下の例が紹介されています。

マザー・カフェ・プラス
  顧客が参加するアドバイザリー委員会設置

エルダーホステル
 全世界で年間20万人以上の参加者がいる世界最大のシニア向け生涯学習サービス機関。「世話役」とよばれるボランティアが活躍。

 「パルシステム」(p.107)

 第6章ビジネスモデルの視野を広げよ
 ネットは、多額の予算でアクセスを増やしたものの、広告費をとれるほどの水準には達しない。金融も無料の資産運用セミナーを開催するものの、実際の購入は少ないといった悩みの解決を試みています。

「第3の場所」を作ること。シニアが集まる条件は、
(1)何度も利用しやすいコアサービスがある
(2)新たな友人をつくるきっかけが多い
(3)生活に役立つ情報が多く得られる
(4)健康維持、教養・スキル向上のための機会が多い

 第3の場所ができたら、
(1)来店する見込み客に商品を売る構造・大成にする
(2)告知した商品の価値を納得してもらいやすい工夫を施す
(3)買う気になった見込み客が買いやすいように、購入の心理的敷居を下げる(P.144)。

 その例として、大リーグ、美術館、スーパー銭湯があります。

「シニア」といっても様々なニーズがあり、思いこみでビジネスを始めても顧客に響かないのですね。

では(^^)/^

【参考】
All About の記事