プロフェッショナル広報戦略
世耕 弘成 ゴマブックス 2006/1
05年秋の総選挙で、自民党の広報を担当した世耕参議院の本。
「政治家と広報」というと、どうも「コントロールされている」という先入感がありますが、民間企業の広報戦略のケース・スタディとしても十分に参考になります。
結果論ですが、電電公社からNTTに民営化するタイミングで、巨大企業の広報を担当した世耕議員のキャリアが、ちょうど、自民党が広報を見直すタイミングで生きたわけですね。
自民党の広報が成功した要因には、企業の広報が成功する要因と共通するものが多くあります。
・トップのリーダーシップ
当初は、それほど協力的でなかった小泉首相が、選挙ではハッキリと広報部隊を支持し、明確な指示を出しています。
・組織的な対応
職人芸的な個人対応ではなく、組織横断的にコミッティを作ったこと。世耕議員に明確な権限を与えることによって、決断したことがすぐに実施されたこと。
また、組織の中でのコミュニケーションも重視し、コミッティでの議論を即座に組織全体で共有したこと。選挙期間中に全候補にファックスを送り続けたというのは、よい例ですね。
・データに基づく判断
刻々と変化する世論をモニターして、そのデータに基づいて判断したこと。また、データに100%頼るのではなく、自民党のスタッフの「勘」に頼る判断も尊重したこと。
・自分の弱みを認めたこと
マーケティングのノウハウ不足を認識し、プレップジャパンを採用したこと。
・PDCAサイクル
コミッティが立案したプランを実施してみて、早い段階でチェックをし、当初予測していた効果と異なるのであれば、すぐに修正したこと。当初、郵政一本で議論していた自民党が、年金で押されたときに、どう対応するかは、難しい問題でした。
自民党から、企業がマーケティングを学ぶ時代に、日本がなりましたね。
では。
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