観てきました。悪くも無いんですが、絶賛でもなく、微妙な印象で映画館を後にしました。TV版が良かったのは、すでにお伝えしたとおりです。しかし、映画にしたときにチャレンジできる3つの試みに十分な結果がでていないように思いました。 第1は、NHKの枠を飛び出すこと。公共放送であるかぎり、ドラマにもさまざまな制約があるはずです。委員会方式にしたことで、そこを「ごまかす」ことができたのに、冒険はしなかった。たとえば、登場人物の2年間の成長。TV版では、恋愛感情や家族の問題を意図的に捨象しましたが、映画では一歩踏み込んでもよかったのでは? もし、NHKの枠でやるなら、最初のnepロゴは何とかしないとです。 第2は、日本を飛び出すこと。せっかく日本海を超えた設定にしたのに、この映画を中国人が楽しめるものにはなっていません。また、日本人の考える企業観、金銭感覚、金融観を世界に訴えるところまであと一歩です。 私がマネーゲーム映画として思い出すのは、「Wall Street」(1987)。Michael Douglasの”Greed is good.” は、この映画でも引用されていますが、太平洋を越えた国でも楽しめましたし、アメリカ人の企業観(の一端)を示してくれました。 “Shall We Dance” で周防監督が示してくれたように、日本人監督でも、外国人にわかる日本らしさを伝えることができたのではないでしょうか。 たとえば、日本人の金銭感覚。ハゲタカでは、「ゼニ」という感覚を一環させて、観客にアンチテーゼとして捕らえてもらおうとしてると思います。が、実は、伊丹監督が「マルサの女」で描いたような現世のご利益にすがる心があると思います。 むしろ、日本らしいのは、個人ではお金に素直に向き合っているのに、集団になると、真逆のことを言う。このホンネとタテマエのギャップこそ、面白いのでは? 第3に、予算の壁です。受信料で作るドラマの制作費は、おのずと限られますが、映画はそこを突破する可能性があった。突っ込み始めれば切りはないですが、やはり、細かな部分で安っぽさが見えました。鷲津がいたビーチ、雑誌の表紙、外国人スタッフの演技、微妙に揺れてしまう画面、中国の農村。 冒頭に「剣岳」のトレーラーが流れるのですが、さすがの大迫力で、映画で流す映像は、こうあらねばならないと思わせます。 と苦言ばかり呈しましたが、NHKには、白洲次郎、坂の上の雲がありますので、大変期待しております。 では。