最強国家ニッポンの設計図
大前研一 小学館 2009/6
根本思想は、『平成維新』と同じ。詳細は、日ごろ発表しているレポートの延長線上にあります。都知事選以後、政治から距離を置いていた大前さんが、ザ・ブレイン・ジャパンの設立を呼びかけます。
http://www.thebrainjapan.com/
焦点が何なのか、わからない衆議院選挙ですが、本書のあとがきを読むと、短時間で考え方を整理できるでしょう。
第1章で議論しているのは、年金です。憲法でもなく、外交でもないところが、過去20年の日本の劣化を物語っているように思いました。
サブプライム以降、逆風だらけの金融界ですが、改めて高い運用力が、国を救うという原点を思い出すべきなんですね。
産業政策としては、従来同様、貸席経済を主張しています。
企業論では、セイコーの再建策をTAG HeuerのJack Heuer 氏に聞いたくだりが印象に残りました。
ブランドを維持するには1人のプロデューサーがいればよい。ところが、それをセイコーは組織でやろうとする。 p.156
教育論は、自分で答えを探す人材の育成を主張。
ガバナンスは、道州制。経済は道、社会政策は自治体というすみわけ。
外交は、4大国との等距離外交にシフト。アメリカとの関係は自然減衰を主張。
防衛は、北朝鮮を叩く能力を保持。核問題は、readynessを落とさないようにする。国民皆兵制も視野に入れています。
おおむね、理解できる内容なのですが、改めて『平成維新』以後の20年を振り返れば、なぜ、大前さんの意見を日本が取り入れられなかったのかと思いますね。それは、小池さん流にいうと、大前さんは「大義」で、日本人全体に「共感」を得られなかったからではないでしょうか。
こうした政策パッケージをさらに深化させる一方で、共感を得やすい身近なissueに絞って、世論に訴えかける必要があると思います。
しかし、大前さんは、TBJというコンサル会社を作ろうとしていますね。むしろ必要なのは、そういう共感を得ることのできるコミュニケーターを発掘、育成することではないでしょうか。
では。
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