海軍反省会は、1980年から1991年まで、大日本帝国海軍軍令部、第二復員省OBが一般には公にせず内密に組織した旧海軍学習グループ。NHKスペシャルにもなりました。
国民性は陸軍に出るといいますが、日本の大企業(メーカー)は、海軍の影響が大きいのではないでしょうか。60年前のできごとの反省でありますが、日本国民性を鑑みるさまざまな要素が詰まった一冊になっています。
本論とは外れるのですが、印象深いのが年功序列。戦後数十年が経過しているのにもかかわらず、卒業年次によって上下関係が規定され、発言するのにも、(私から見れば)謙っての発言が随所にみられます。
次に、技術屋と事務屋の対立。p.143には、SONYの井深さんの名前が出てきます。戦後の日本の技術力の源流の一つが、海軍にあったのですが、その海軍の技術の進歩を止めたのが「法科万能の思想」でした。技術に精通しているから、的確な指示ができるというのは現代企業にも通じることでしょう。
機関科問題も、同じような文脈から興味深いものです。海軍兵学校、海軍機関学校、海軍経理学校は独立して存在し、統合の動きがあったのに果たせませんでした。大企業(メーカー)は、戦略屋、部品屋、事務屋に分かれてないでしょうか。
軍令部の暴走も、しかり。もともと作戦を立案する部署なのですが、ある時点から政治的な影響力を行使し始める。皇室の威光を利用して、作戦以外のことにも口を出し始めて、開戦に傾いていく。現代企業でも、企業戦略を考える部署が、社長の威光を借りて、営業施策にまで口を出すことはよくあるのではないでしょうか。なのに、軍令部参謀がいわく、
本当にこの戦争がやれるかどうか、徹底的に突き詰めて検討することは一度もなかった
日本の組織というのは、「空気」ができあがると、それに逆らうような思考が自動停止するんですね。
p.148では、戦後、アメリカの技術者が、日本海軍が負けた原因を分析し、ボルトとナットの互換性がなかったからだと指摘しています。部品共通化は、技術の問題ではなく、品質管理のマネジメント(リーダーシップ)の問題で、もそもと日本人はそういうところがあるのかもしれません。
これだけ貴重な証言は、さまざまな議論を呼んでいるわけですが、これをどう生かすのかがわれわれの世代の責任なのだと思いました。
では。
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