オランダ人と仕事をしていて感心することのひとつに、全体を把握する力がある。あるオランダ人経営者のノートを見た時に、現場のオペレーションがどうなっているのか、きれいな図にしていた。その図が、とてもシンプルかつ、的を得ていたので、驚いたのを覚えている。
たとえば、下図は、オランダのコンサルティング会社、メタボリック社が作成した資源の流通図。
私などは、世界の資源がどう使われているか、数字を全部書き出そうという発想がもともとない。こうやって川上から川下まできれいに調べ上げて図にする力が、オランダ人には、あると思う。
日本人は、こうして俯瞰することは、むしろ苦手。ものすごく細かいところに注目するのが得意なように思う。いまや世界から注目されているオタク文化しかり。「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」を地上波で全国放送する国は、他にあるだろうか。そこには、どんな職業も平等で、それぞれの職場に登る山があるという勤労観がある。
なぜ、オランダ人に全体把握能力があるのか。思いつくのは、運河。「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が造った」と言われるほど、干拓地が広い。そこには運河・水路が張り巡らされている。水位の管理を間違えれば、水路沿いの全員が水害にあう。オランダ人にとって、川上から川下までの水系(システム)を把握し、どの水門を開けたら、どの地域の水位がどれだけ上がるか知ることは、死活問題だった。
似たような例を、ロボット利用でも見た。オランダではペッパーのようなロボットは造っていない。しかし、Pepperをハンデキャップのある人が同利用するかを分析し、利用料金が問題点になることを把握。中間組織を作って投資家を呼び込み、実際の利用を促すというスキームを書いてしまっている。
日本の素晴らしいところは、従業員が数十人しかいないメーカーでも、ロボットを造ってしまうこと。たぶん、全く儲かっていないと思うが、細かすぎて伝わらない技術に現場は喜びを感じているのだと思う。両国が助け合える分野は、広いのではないか。