When Shell met Amazon

 2006年。ロイヤル・ダッチ・シェルの売上高は、$319 bil。アマゾンの30倍ありました。2020年、コロナ禍により、シェルの売上は激減。逆にAmazonの売上は急増し、ついにシェルを抜きそうです。

 20世紀の金脈は、石油でした。それを掘り当てたシェルに莫大な富をもたらしました。21世紀の金脈は、データでしょうか。それを掘り当てたGAFAの勢いは止まりません。
 シェルとアマゾンは、配当をめぐっても対象的な会社でした。シェルは世界で最も配当を払う会社でした。この春に戦後初めて減配するまで70年以上に渡って、配当を維持し続けてきました。

 一方のアマゾンは無配。そんなお金があるなら、研究開発に回すテクノロジー企業です。下図は、売上高と、費用項目の売上比です。

 シェルの粗利益率は10.7%。売上の4.1%を販管費として払い、6.7%が営業利益として残りました。ここから配当をしたわけです(2019年度)。

一方、Amazonの粗利益率は、22.3%。販管費は売上の5.1%なので、営業利益率は17.2%のはずなのに、研究開発に12.8%もブチ込みました。営業利益率は、4.4%とシェルを下回ります。

 シェルに研究開発費は不要なのでしょうか。2015年には、イギリスの天然ガス会社を買収しました。石油以外のエネルギーに多角化するのは不可避だったからでしょう。

 2017年には、石油製品の温室効果ガス排出係数を、2035年までに20%、2050年までに50%減らす目標を定めました。これを実行するだけで、相当なR&Dが必要です。グリーンな発電、蓄電、池EVカーへの対応、送電のコントロール、スマートホームなど、Amazonとバッティングしそうな分野でも戦わなければいけません。2019年度の研究開発費は、962百万ドルですが、売上比では、0.3%に過ぎません。

 コダックを思い出しますね。写真がフィルムからデジタルに代わるのを最も理解していたのは同社でした。しかし、フィルム写真があまりにも儲かるために、自分自身を変革できなかった。

 シェルも、いつまでも石油に頼っていてはいけないとわかっていたはずです。現に低炭素社会に対応するために、継続して投資していました。しかし、株主は安定した配当を求めていました。

オランダの経済紙、Het Financieele Dagbladに、社長のインタビュー(オランダ語)が掲載されていました。減資の決断の際には、眠れなかったと率直に語っています。記者は遅々として進まないCO2対応を問いただしますが、経済原理に反するような目標を設定することないと述べていました。彼も、石油事業への依存を減らし、構造転換をするつもりでいたことでしょう。しかしそれは、彼の2代ぐらい後のCEOの仕事と思っていたのかもしれません。2020年の売上高予測は、$220bil。2011年度の$470 bilの半分になってしまいました。その日は、突然、今年現れてしまいました。

同じ株式会社でも、アマゾンのようなR&D志向の強い会社ができる一方、シェルのように資金を研究開発に割り振れない会社にもなるのは、興味深いところです。コロナで、シェルの配当の呪縛が解けたいま、同社のR&Dはどうなっていくでしょうか。