【本】知ってるつもり

知ってるつもり――無知の科学

The Knowledge Illusion  Why We Never Think Alone

by Steven Sloman and Philip Fernbach

スティーブン スローマン 早川書房  2018/4

認知科学者による脳の話。認知科学(Cognitive science)とは、知的システムと知能の性質を理解しようとする研究分野。本書は、人間の認知がいかにあやふやか。人はなぜ、自らの理解度を過大評価してしまうのか教えてくれます。たとえば、人間とコンピュータの違いは、p.39。

人間とコンピュータの違いをより端的に示すのは、人間は思考するとき、メモリから読み書きする中央処理装置を使わないという点だ。(中略)人間は自らの身体、自らを取り巻く世界、そして他者を使って思考する。

一方、すべてを記憶する人の話は、p.49。(Elizabeth Parker et.al. 2006) 超記憶症候群あるいは非常に優れた自伝的記憶(Highly Superior Autobiographical Memory, HSAM) しかし、この能力は本人は負担に感じているのです。

 脳は特定のタイプの問題を解決できるようjに進化のプロセスを通じて形づくられてきた。膨大な詳細情報を記憶することは、そうした目標を達成する上で役に立たない。p.50

集団的知能は、第6章。

たった一人の思考はたかが知れている。自然界では複数の個体が強調することで、高度な行動が可能になることが多い。複数の認知システムが力を合わせると、個体の能力を超える集団的知能が出現する。p.122

ミツバチの例が象徴的です。

個々のハチに自らを守る力はない。働きバチは後尾ができない。雄バチは食料を集められない。女王バチは幼虫を世話することはできない。p.123

一方で、我々の認知の限界により、知っているつもりで結論を出してしまう例は、たとえば政治の世界。オバマケアを巡る論争は、p.188。

アメリカ国民の40%以上が医療負担適正化法が法律であることすら認識していなかった。

結果、

今日の政治的議論はきわめて皮相的だ。市民もコメンターも政治家も、提案された法律のプラス面とマイナス面を真剣に分析することなく、さっさと意見を固めることが多い。テレビ番組はニュース番組を装いつつ、実際は出演者が怒鳴り合うだけだったりする。p.205

こんなことが起こる原因の一つは、理解の錯覚。

理解の錯覚が起こるのは、人は「見たことがある」あるいは「知っている」ことを、「理解している」ことと混同するためだ。p.235

深く学んでいる学者でさえ例外ではありません。p.275

学者が自らの思想にそぐわない新たな発想と出会うと、たいてい3つの反応が連続して起こる。まず否定する。次に拒絶する。そして最後にわかりきったことだと主張する。

結論としては、p.277

無知は歓迎すべきものではないが、必ずしも悲嘆すべきものでもない。人間にとって、無知は避けられない。それは自然な状態だ。世界はあまりに複雑で、およそ個人の理解を超える。無知は腹立たしいものかもしれないが、問題は無知そのものではない。無知を認識しないがゆえに、厄介な状態に陥ることだ。

“I know that I know nothing” ですね。
では。

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