【本】残酷すぎる成功の法則

残酷すぎる成功の法則

Barking Up the Wrong Tree

The Surprising Science Behind Why Everything You Know About Success is (Mostly) Wrong

エリック・バーカー
飛鳥新社 2017/10

世の中の「成功ルール」を検証した全米ベストセラー。こちらのブログの書籍化。

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邦題が原題から乖離しているのは、監訳者に引きづられたものと理解しました。

自己啓発本が説く、成功の秘訣とやらを、エビデンスを引用しながら検証しています。たとえば、

  • 成功者は優秀か: アメリカの大富豪の大学での成績はよくない
  • 成功者は社交的か: 専門家やスポーツ選手の多くは、むしろ内向的

など。
第1章はエリートについて。冒頭は先天性無痛症(CIPA)のアシュリン・ブロッカーの話。痛みを感じないなんて羨ましいと思うかもしれませんが、それが彼女を命の危険にさらしてしまうのです。ヤマト運輸の社長が、労働組合を会社の神経と観ていたのを思い出しました。

ハーバード大学のショーン・エイカーの研究でも、(中略)700人以上のアメリカの富豪の大学時代のGPAはなんと、「中の上」程度の2.9だった。p.26

ハーバード大学のゴータム・ムクンダ教授は、リーダーを「ふるいにかけられた」かどうかで2つに分類。米国の歴代大統領の政策のインパクトを検証した。p.26 チェンバレンとチャーチルを例に引きながら

ユニークな資質とは、日ごろはネガティブな性質、欠点だと捉えられていながら、ある特殊な状況下でも強みになるものだ。p.28

と述べていました。こういう変わり者になることについて、J.S.Mill。

That so few now dare to be eccentric, marks the chief danger of our time.

カレン・アーノルド氏は、イリノイ州の高校を主席で卒業した81人を追跡調査。p.22 彼らん中に、世界を変革したり、人々に感銘を与えるまでになる人はいなかった。

世の中を変える要素がわかるのは、投資家であるマーク・アンドリーセン氏の言葉 p.43

ベンチャーキャピタルの仕事は100%「外れ値」、それも極端な外れ値への投資です。(中略)本当に素晴らしい強みがある会社には、たいてい深刻な欠陥もあるということです。

第3章は、諦めについて。最近流行りのグリットも論じていました。一つは、グリットが何によってもたらされているか。もう一つは、正しく諦めることについて。

前者について、印象的なのは、アウシュビッツの生き残りの条件についてのヴィクトール・フランクル氏の言葉。p.104

この世で最も過酷な場所で、恐怖に耐えて行き続けられる者は、生きる意味を見出している者だ

身体を鍛え抜いた者ではなく、自分をまちわびてくれる人間がいた人が生き延びた。

面白いゲームの4条件は、Winnable,Novel,Goals,Feedback。斬新であることの例として、ピルズベリーのホットケーキミックスの開発が紹介されています。p.129

1940年、インスタントのケーキミックスを発売したが、あまり売れなかった。同社は首をかしげた。手間はかからない楽な送品をつくったのに、主婦たちに受けない。やがて思い当たった。ケーキづくりは単なる骨折り仕事ではなく、家族への愛情表現だったのだ。そこで、卵を加えなければならないなど、ひと手間必要なケーキミックスを作ったところ、売上が跳ね上がったという。

本当に大切な資源は、時間p.137。

ドラッカーは、時間が最も希少な資源だと考えていた。彼らが人びとに薦めた第一の防衛策はスケジュール管理の向上ではなく、自分の目標を達成するうえで、その進捗に寄与しないすべてものもを断つことだった。

小さく失敗する例としては、芸人のネタの改善方法p.150。

観客は、クロス・ロックがステージで失敗したと思って観ているが、そうではない。彼は客の反応をテストしているのだ。矢継ぎ早にネタをまくし立て、受けたものを残し、受けなかったものを棄てる。この作業を六ヶ月から1年、週5日毎晩くり返し、選りすぐりのジョークを集めたものが、爆笑につぐ爆笑をかっさらうパフォーマンスとなり、秀逸な一時間番組になる。

結婚相手を見つける話も面白い。元NASAのロボット研究家、ランドール・マンローのはじき出した、ただ一人の完璧な人に出会える確率は、一万回の生涯で1回。一方、マット・パーカーの最適停止理論によれば、一生の間にデートできる人の人数を予測し、その平方根を算出。その人数まで婚活を継続し、一番良い人と結婚する。約90%の確率で最適な相手を見つけられる。 p.155

第5章は、自信について。金融アナリストのローラ・リッテンハウスの発見。

企業をだめにするのはどんなCEOか知りたいだろうか。株主に向けた年次報告書で、CEOが何回「私」という言葉を使っているか数えてみればいい。

最後に成功とは。

成功とは一つだけの特性の成果ではない。それは、「自分はどんな人間か」と「どんな人間を目指したいか」の2つを加味しつつ、そのバランスを調整することだ。