GMO寄付講座 フルキャスト 平野岳史社長

満天の星―フルキャスト物語
GMOの寄付講座の(第3回目)に行ってきました。

 2006年5月11日(木)18:00?19:30
 早稲田大学 8号館 B102号教室
 フルキャスト(4848) 平野社長

 平野さんの経歴は、こちらの通りです。非常に参考になる講演でした。経営についてのアドバイスも良かったのですが、最も印象に残ったのは、「話し方」でした。声の大きさ、ピッチ、トーン、ポスチャーなどが完璧で、これが経営者のコミュニケーションかと勉強になりました。レーガン大統領は、「Great Communicator」と呼ばれましたが、平野さんは、それに近いです。


 こうしたコミュニケーション力を身につけたのは、幼少のころから苦労してこられたからかもしれません。いろんなところで話をされていますが、小さいころに父親を亡くし、母親もガンにかかるなどするなかで、大人との対話力をつけたのだと思います。また、起業後になかなか軌道にのらなかった時代(「売れない演歌歌手時代」)に、人の痛みのわかるになったのだと思います。

 講演の中で印象に残った話は、以下の通りです。

1.起業の3要素
 平野社長は、大学時代に起業しようと思っていたのですが、結局、就職します。3年で起業すると決めていたそうですが、そのときに3つの目標を掲げました。

 イ)仲間を見つける
 ロ)事業を決める
 ハ)投資家を探す

 このうち、できたのは、イだけで、ロ、ハはそろわないまま、起業します。
 その時に、揺れ動く心境を「2人の平野」という例えで話してくれました。ここで独立しなくてどうするんだという平野と、そんなムリしなくても、部長ぐらいにはなれるぞという平野。こうした時に決断ができるのは、「現状を捨てる勇気を持っているか」だそうです。
 
2.何をやるよりも誰がやるか
 こうして独立した平野さんですが、現在の人材派遣業を始めたのは、市場調査をして有望だと思ったわけではなく、自分ができることをやっていった結果なんだそうです。
 サラリーマンをして、アルバイトをやった。その中の家庭教師派遣業なら自分でできると思った。4000人の登録者がいて、400人しか口がないので、残りの3600人に何かしようと思っていたら、軽作業をやっている社長から、バイトの調達を頼まれた。
 なので、起業で大切なのは、何をやるのかよりも、誰がやるか。自分ができるか資質をチェックしてみることが大切なんだそうです。
 
3.社長は、人事部長
 また、ベンチャーに必要なのは、戦略というよりも組織力。そのココロは、小さい企業は、ハイリスク・ローリターンだから。同じ働くのであれば、安定して給料も高い大企業がいいに決まっている。それなのに、リスクをとって、ベンチャー企業で働くのは、それだけのインセンティブを社長が用意するから。
 会社も10人までは、社長が「エースで4番」で成長できる。しかし、それを超えると、優秀な社員を集めないと会社は伸びない。なので、社員に夢を与えるとか、社長が好かれるという要素(人間力)がないと、成功は難しい。

4.成功する社長の3要素
 イ)楽観主義(能天気)
 ロ)負けず嫌い
 ハ)執念深い(ただし、ネアカ)

 自分が運がいいと思う(Positive Thinking)ことは大切。ここでギャンブルの話が出てきました。自分は運がいいと思う人と運が悪いと思う人がギャンブルをやって、結果が変わるかという実験をしたところ、ほとんど差は出なかった(どちらも勝率50%)。それなのに運がいいと思う人は、自分がツイていると思い、運が悪いと思っている人はツイてないと思う。人が動くのは、科学的な根拠とは限らず、感情であることを理解するのが、経営に重要なんだそうです。
  
【Q&A】
 質疑応答で面白かったのは、以下のコメントです。

Q:起業する時には、経営理念は不要とのことだったが、必要となったとはどのような経緯だったか。
A:社員が70?80人の時には、マンツーマンで話ができたので、必要なかった。自分が直接話せるので。それを超えたときに、階層ができ、自分の思いや夢を間接的に伝えなければならなくなった。その時に、経営理念をまとめた。

Q:経営のスピードを上げるためにどうしたらいいか。
A:自分と対極の人間を入れる。最初は切ろうかと思うが、思考の幅が広がって、決断が早くなった。もちろん、その人物が信頼できることが前提。

Q:「売れない演歌歌手」時代の乗り越え方
A:100回止めようと思ったが、101回思いなおした。自分が成功の方向に向かっているという確信がないときには、とても苦しい。しかし、他の人に負けたくないという周年が、101回思いなおす原動力になった。

Q:優秀な社員を採用するには、どうしたらいいか。
A:自分が優秀にならなければならない。人間は、第一印象が大切。初対面の時には、会って5分で相手を見て、自分の過去の経験に照らし合わせて、カテゴリわけをする。この時に言葉が果たすのはせいぜい2?3割で、あとは表情とか、話し方だとかいうところが残りを占める。相手にあわせて、コミュニケーションが取れることが大切。

 こうして、文字にしていくと、一言一言が的確かつロジカルなのですが、会場にいると、全く威圧感を感じない。大前研一さんのようなタイプのスピーカーとは全く違う方だと思いました。

 では。

第4回 サイバード 堀会長を読む。

【参考】
・平野社長:インタビュー 2006/3/15
日本ベンチャー協議会(平野さんが会長
・フルキャスト グローイング スクール (起業スクール)

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