GMO寄付講座: ACCESS 荒川 亨会長

企業家倶楽部 (2003年2月号)


GMOの寄付講座の(第5回目)に行ってきました。

2006年5月25日(木)18:00?19:30
早稲田大学 8号館 B102号教室
(株)ACCESS(4813) 荒川 亨会長

荒川会長の略歴は、こちら。ACCESSの成功要因については、こちら。説明スライドは、同社の決算説明資料と重複する部分がありました。

GMO熊谷社長が、冒頭、「日本のビルゲイツ」と紹介していました。ACCESSは、今では、情報家電のブラウザで9割のシェアを持つ優良企業ですが、そこに至るまでの苦労は、並大抵のものではありませんでした。熊谷社長が、刀(カタナ)の「柄(え)」ではなく「刃(は)」持って成功した非常に稀な会社と表現していました。


携帯電話の業界は、3社のキャリア、10社の端末メーカーが牛耳る世界です。ここにベンチャーとして乗り込めば、相手にしてもらえないか、買い叩かれるはずですが、それを技術力で利益の出る会社にしたのです。
同社の技術力については、日経エレクトロニクス特集「iモードと呼ばれる前」(2002/8/26 – 2003/2/17) に詳しく描かれています。あまりに先見性があったので、iモードのブラウザを7年のバージョンアップしなかったそうですね。

同社のブラウザーを搭載する端末は、900機種、250百万台。年間80百万台で増えているんだそうです。日本のパソコンの出荷台数は、年間13百万台ですが、携帯電話は40百万台なんだそうで、ネットにつながるといえば、パソコンではなくて、情報家電なんですね。

1.競争戦略
同社が秀逸なのは、イ)マイクロソフトとの直接対決を避け、ロ)日本の家電メーカーに「外部依存性」を持たせたことです。
NetFrontを作ったのは、95年ですが、同じ頃にできたネットスケープの末路を見れば、その差は歴然としています。荒川会長は、パソコンではマイクロソフトに勝てないと考え、日本でも勝機のある家電向けのソフトウェアを選びました。
とはいえ、日本のメーカーも、巨大企業ですので、ソフトを買い叩かれる危険はありました。そこで、ネットワークにつながるものであれば、他社製品とつながらなければならないため、メーカーが自社技術にこだわらない(外部依存性)だろうと考え、情報家電向けのブラウザに取組みます。

2.インフラの進化
戦略は、ズバりあたったACCESSですが、それが花開くのには、5年の年月がかかりました。売上げが伸びてくるのは、2001年度からですし、利益が増えるのは、2003年度からです。
その原因として、「インフラの進化は時間がかかる」とおっしゃってました。情報家電のブラウザが使われるまでには、ネットの回線スピードが速くなる必要がり、それは、一気に実現するものではなかったのです。

3.イネーブラー(Enabler)
ブラウザのシェアが高まってくると、メーカーとの力関係が変わってきます。面白かったのは、最近では、メーカーがターンキー・ソリューションを求めるようになってきたことです。ブラウザを抑えると、そのOSやアプリの一部までアクセスに仕事を頼むんですね。

4.資金調達
25歳で会社に入らずに創業した荒川会長ですが、過去を振り返って、成長のボトルネックになったのは、資金調達だったそうです。売上げは、毎年30%ずつ増えていったのですが、それ以上は増えません。これは、ソフトウェアの開発は、お金を先に使って人を雇い、ソフトを納入してからお金がもらえるので、その運転資金が必要となるからです。
2001年あたりから売上げが急激に増えるのですが、マザーズ上場による資金調達が、大きな要因とのことでした。これは、サイバードの堀会長と同じ意見ですね。

5.今後2つのトレンド
今後は、イ)放送と通信、ロ)携帯とブロードバンドが融合するそうです。このトレンドにどのように対応するかが鍵となるとのことでした。

6.心得
最後に受講生に対して、4つのメッセージがありました。
イ)夢をあきらない

ロ)困難から逃げない
困難からは逃げたくなるが、真正面からぶつかっていくことで、周囲の信頼感が増す。

ハ)一人では何もできない

ニ)正直に生きる(透明性)
人間は弱い。なので、正直に生きることで、道は開けてくる。

【Q&A】
Q:他の大企業ができなかったブラウザー開発をなぜ、ACCESSができたのか。
A:優秀な人間がどれぐらい(集中して)取組めるかが鍵。
F1レースに出る会社と、コンパクトカーを作る会社には、思想の違いがある。

Q:会社が大きくなる時の注意点は?
A:数多くの失敗をしてもめげなかったので、ここまでやってこれた。
自分でやりたくなってしまうのを抑えるのも大事なこと。そういうときは、夢を大きく持ち、自分ひとりでは到底できないと悟ればよい。そういう環境づくりが楽しくなればよいのではないか。「会社作りもモノ作り」

アメメカ、インド、中国と比べて、日本はソフトウエアのベンチャーは、育ちにくいのかなと思っていましたが、考えが変わりました。製造業だけでなく、ソフトウェア開発でも、こういう企業が出てくるのは、実に頼もしいですね。

では

近藤太香巳社長

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