母校での講義

 早稲田経営大学院で、多国籍企業の経営について、お話をさせていただきました。普段は、目の前の仕事をこなすばかりでしたが、学生向けに話をまとめるなかで、30年間のの変化を整理することができ、私も勉強になりました。

 最も、伝えたかったのは、多国籍企業経営は、歴史的な転換点にあるということでした。1989年、東西冷戦が集結することで、東側の安価な労働力が、突然、西側と結びつくようになりました。1990年の中国の生産年齢人口は、759百万人。「西側の多国籍企業経営と東側の安価な労働力の結婚」が利益を生み出すのは、当然のことでした。

 中国の生産年齢人口は、2015年に998百万人まで増えました。これほど、安価で手先が器用な労働者の増加は、もう二度とないでしょう。私は、世界200都市を訪れ、現地の床屋で髪を切ってきましたが、中国並みに髪を切れる国は、イランぐらいでした。インドやアフリカでは人口が増えると思いますが、中国ほど、manufacturing が向いているかはわからないのです。

 コロナとウクライナ戦争で、幸せな結婚が終わってしまいました。世界は分断されてしまいましたし、中国の生産年齢人口は、減少に転じています。海外に出れば、かなりの確率で儲かる時代は、終わろうとしています。

 学生からは、日本式経営が海外で受け入れられない理由を聞かれました。ただ、日本企業もこの30年間で複数国での経営を進化させています。日本の面積は、377万k㎡ですが、水域を入れると、447万k㎡。EUの423万k㎡とほぼ同じです。日本はこの面積に1つの国しかないのに、EUは27も国がひしめいています。EU企業はそもそもがマルチナショナルであり、そのままEU域外にも展開しているに過ぎません。

 アメリカ企業も、アメリカが多民族なので、そのままのやり方で海外にでていけてしまうのだと思います。

 その点、日本は、異文化を学ぶのに最悪な環境で、このハンデを勘案すれば、よくやっている方だと思います。ネットの普及もあり、MBA的な理論は、欧米だろうが日本だろうが、時差はなくなりました。むしろ、目に見えない「文化」への対応が、日本企業にとって重要になってきます。特に地政学的なリスクがかつてないほどに高まった現在、この感覚を研ぎ澄ますには、欧州駐在が不可欠と考えます。

 私も、オランダに住むまでは、こんなに国際政治が複雑だとは意識できていませんでした。ウクライナ戦争に直面してからは、その残忍さと、裏返しであるダイバーシティの重要性を噛み締めています。これは、日本、アメリカ、シンガポールでは実感できなかったもので、一人でも多くの学生に、欧州を若い内に体験してほしいと願っています。

 では。

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