【本】加賀屋のこころ

細井 勝 PHP研究所 2010/2
加賀屋を先日紹介しましたが、本を読んでみました。加賀屋は、2007年の能登半島地震(M6.9)で被災しており、復活までの軌跡は、非常に参考になりました。

地震発生時、最初の難関が、客の避難。これは、冷静な客室かかりの誘導で、犠牲者を出さずに達成しています。

次が、復旧までの人員確保。平均単価が38千円。キャンセルが25千人。これだけで950百万円の売上減。建物の修復も合わせれば20億円近い支出が予測されます。200人余の客室係を一時解雇にするかどうかは、切実な問題でした。加賀屋は解雇をしない道を選び、従業員教育の1ヶ月とします。

復興の第一歩は、大林組の動き。地震発生から20分後に加賀屋に到着。大きなダメージを受けた建物を、1ヶ月で修復しています。日本のゼネコンの現場力はすごいですね。

復活までの1ヶ月で印象的なのは、経営者のスピーチ。客室係の解雇をしないという社員集会と、営業再開直前の社員集会。こういうときに、会長、女将が、力強い言葉で社員に語りかけています。私も、東日本大震災直後に、総理大臣から胸を打つスピーチを聞いてみたかったです。

他にも食中毒を出さない努力も印象的です。p.221

一人の宿泊客が1泊2食で使う食器の数は、夕食時と朝食時をあわせて45個から50個といわれ、仮にひと晩に千人の泊まり客があると、厨房は4万5千個から5万個の器に料理を盛り付ける仕事に総がかりとなる。

この状態で、加賀屋の「注意場」は、アレルギーなどの個別注文に対応しています。刺身の氷盛りを最適なタイミングで食べてもらうために、同じ客室でも、10~20分の時間差をつけて配膳します。

そんな努力をしていても、年間2万通のアンケートが送られ、厳しいクレームもあります。興味ふかいのは両立しないクレームへの対処です。ある顧客は、部屋に時計がないと言う。もう一人の顧客はゆっくりしたいので時計を外せという。こういうクレームにさらされることで組織はさらに強くなるのですね。

努力は無限です。