【本】大震災後の日本経済

大震災後の日本経済
野口 悠紀雄 ダイヤモンド 2011/05

野口先生の最新作。週刊ダイヤモンドの連載と同じ主旨ですが、経営者のみなさんは、「需要不足が供給制約に変わった」ことを本書で理解しておくべきだと思いました。

要旨(目次)は、ダイヤモンド社のホームページで閲覧できます。
http://www.diamond.co.jp/book/9784478016121.html

震災後の日本経済で着目すべきなのは、電力制約。このボトル・ネックがある中で復興投資が増えると、クライディング・アウトが生ます。

この第1章のところは、ダイヤモンド社のサイトで読むことができます。

サブプライムショックは、世界的な需要不足でしたので、

すべての経済学者がケインズ経済学者になったp.32

のですが、震災後の日本は、供給面の制約が問題ですので、

We should be all classic economists. p.33

なのだそうです。

経済学者は、円高と電気料金引き上げという結論を出しますが、2つとも政治的に難しい決断になります。

第2章では、電力問題に取り組みます。価格か統制か、という話なのですが、著者は、ピーク時の基本料金と違約金の引き上げを主張。企業の基本料金を3.5倍という提案もしています。野口先生らしいと思うのは、よみがえった「1940年体制」の亡霊 のあたり(p.105)。通産省の「虎ノ門銀座」の話は笑えません。

第3章は、財源の話。財政構造を変えろというのは、おっしゃるとおり。しかし、国会はそんな議論にもなってませんね…。

経営者が押さえておくべきは、第4章のシミュレーション。復興財源を国債に求めた場合、消化が困難になれば、金利が上昇する。金利が上昇すれば円高になるという基本。ここで日銀が引き受ければインフレになる。当たり前のことですが、要確認。

第5章は対策。

(1)リロケーション: 工場を西に、サービスを東に
(2)脱工業化
(3)円高対応
(4)資産大国

為替リスクを抱えている経営者は、「1ドル=80円は4割りほど円安」あたりも要チェックです。日米の物価上昇率で考えると、1ドル=57円。耐久財価格、あるいは金利平価で考えると、1ドル=80円では、4割ほど円安と記しています。

(1)東西日本の役割分担以外は、野口先生が従来から主張されてきたことですね。ただ、それは以前としてやりきれていない。経営コンサルとしては、その理由を企業内部で探索し、実行を上げるべく努力を続けようと思います。

ただ、私の直感としては、いずれも、直系家族文化が、この転換を妨げていると思っています。根深い問題ですね。

では。