デフレの正体
藻谷 浩介 角川書店 2010/6
日本政策投資銀行参事役による日本経済論。東洋経済:2010年上期 経済書ベスト20の5位。デフレが単なる景気変動ではなく、生産年齢人口の減少によってもたらされていることを論証しています。
われわれが「常識」と思っていることをデータで覆す場面が何度も出てきます。
たとえば、生産性を向上すれば、景気が悪くなるというもの。生産性は分子の付加価値を高めるか、分母の労働力を減らせば高まります。分子を増やさず、分母を削減した結果、生産性は高まったが、GDPは減りました。
また、シニアがお金をストックしていても、フローにならない例としては、相続について触れています。
ところが女性は世界最長寿、男性も長寿ベスト3に入っている日本では、亡くなる側ではなく相続する側の平均年齢が六七歳だというのです。p.164
これでは、個人資産があっても、GDPには貢献しませんね。ほかにも
- 戦後最長の好景気でも減る国内新車販売台数
- 地方の衰退は、首都圏の成長によるものではない
- 都心部は元気という嘘
- 地域間格差に逆行する沖縄
- 日本最大の現役減少地帯=大阪
- 高齢者増加地帯=首都圏
- 女性の就業率と出生率は相関している
数十年後には、生産年齢人口が3~4割減少します。著者が予測する世界は、以下のとおり。
大量生産品市場がゆっくり縮小する一方で、地域地域の個性を活かした手作りの地産地消品を供給する零細事業者(新規参入する社会企業家も多く含まれるでしょう)が増え続けます。海外から安価な大量生産普及品を購入する流れも拡大しますが、他方で少し遅れて人口成熟して来るアジア諸国などに向け、そうした高価な地産地消品を輸出する流れも年々太くなっていくでしょう。p.266
引き続き人口動態に注目です。