【本】新聞消滅大国アメリカ

新聞消滅大国アメリカ
鈴木伸元 幻冬舎 2010/05

NHK報道局による番組デリバティブ。新聞が消えるのは、単に産業が衰退する以上の影響があるのがわかります。

アメリカに住んで驚くことのひとつに、地方紙の重要性があります。国土が日本の25倍ある同国での地方紙は、その地域を支えるインフラと言えるものでした。ミネアポリスでいえば、Star Tribune。スポーツ紙はないので、Vikingの試合がある週末は、その記事だけで盛り上がります。また、景気がよい時代でしたが、求人広告が60ページあったりしました。

ネットが新聞に代わり得ない例として、地元情報が上がっていました。全国紙が取り上げるようにニュースは、ネットで容易に見つかるのですが、地元の、しかも調査報道と呼ばれるようなものは、見つからない。興味深かったのは、Prof. Sam Schulhofer(Princeton Univ.)の調査。p.141

Do Newspapers Matter?
Evidence from the Closure of The Cincinnati Post
http://wws-roxen.princeton.edu/wwseconpapers/papers/dp236.pdf

シンシナティ・ポスト廃刊の地域への影響は、以下のとおり。

  • 選挙の投票者数減
  • 政治資金の減少
  • 立候補の新人候補者減→現職に有利

と、こうした影響が「実際に」出ています。

新聞社も、ネット対応に取り組んでいますが、ウオールストリート・ジャーナルを除いて成功はしているとは言えない状況。一部では、Pro Pubulicaのように、寄付を取り入れる試みも出てきました。

http://www.propublica.org/

こうしてみると、献金を募る政治家のようにも見えます。

日本の新聞社は、ビジネスモデルが違うということで、倒産があいついでいるわけではなさそうです。アメリカでは、収入の8割が広告費。日本は3割です。それでも、時間が前後するだけの問題でしょう。全国紙というよりも、地方紙がどうなるかに注目ですね。

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