野中 郁次郎ほか 日経ビジネス人文庫 2005/8
『失敗の本質』チームによる戦略分析。圧倒的に不利な状況で逆転を成し遂げるときに、戦略の本質が最も顕在化するという仮説をベースに、6つの戦いを分析しています。
- 毛沢東の反「包囲討伐」戦
- バトル・オブ・ブリテン
- スターリングラードの戦い
- 朝鮮戦争
- 四次中東戦争
- ベトナム戦争
毛沢東の反「包囲討伐」とは、
弱小な中国共産党軍が強大な国民政府軍を相手に長期間にわたる戦闘を繰り広げ、最終的に勝利した世紀の大逆転と言われる戦いである。 p.397
ここでの大戦略は、共産革命。軍事戦略は、遊撃戦
敵進我退、敵駐我撹、敵疲我打、敵退我追。p.397
農民から編成された軍には、三大規律と6項の注意が徹底された。意外なのが、三大民主。
赤軍の物質生活がこのように粗末であり、戦闘がこのように頻繁にやられているにもかかわらず、赤軍が依然として崩れず維持できているのは、党の果たしている役割のほかに、軍隊内で民主主義が実行されているからである。上官は兵士をなぐらず、将兵は平等に待遇されており、兵士には会議を開き意見をのべる自由があり、煩わしい儀礼は廃止され、会計は公開されている。p.68
バトル・オブ・ブリテンで印象的なのは、チャーチルの意志。
ヒトラーとの妥協という選択肢もないわけではなかったが、それはデモクラシーが全体主義に屈服することを意味するとして、チャーチルによって断固拒否された。p.400
大戦略としては、デモクラシーとアメリカを巻き込むことがあった。
軍事戦略は、制空権を確保すること。
作戦戦略は、防空システムの構築と一元運用。
と、残りの戦争でも、大戦略から技術までが、重層的に働きかけることで逆転を実現しているのがわかります。
日本社会へのフィードバックとしては、p.5
日本のリーダーには徹底的にリアリズムが欠落していると同時に、理想主義も貧困である、ということであった。この2つの指摘は相矛盾しているように思われるかもしれないが、優れた戦略的リーダーはこれらを同時に達成しているのである。
終章では、10の命題が提示されます。
- 戦略は弁証法である
- 戦略は新の目的の明確化である
- 戦略は時間・空間・パワーの場の創造である
- 戦略は人である
戦略を洞察するのも、実行するのも人間である。分析的戦略論は傍観者的であり、人間の顔が見えないという限界を持つ。
リーダーシップの本質は、誰を選ぶか、誰を持ち上げるか、誰を押さえつけるのか、誰の首をすげ代えるのかの判断を伴う人事でにある、p.433
- 戦略は信頼である
- 戦略は言葉である
- 戦略は本質洞察である
事実は「目に見える」が、本質は「目に見えない」。データは事実であるが、戦略思考にはその背後にある真の意味やメカニズムを読む洞察力が要請される。p.439
- 戦略は社会的に創造される
- 戦略は義である
- 戦略は賢慮である
内容が濃すぎで消化しきれないですが、将来、どこかで壁にぶち当たった時に、また、振り返りたいと思います。