【本】半導体 尖端覇権の興亡

半導体 尖端覇権の攻防 大鹿 靖明 講談社 2026

半導体産業の30年がよくわかりました。『危機の三十年』が補助線になりました。89年のベルリンの壁崩壊で自由主義が勝利し、産業政策が「ダサい」と思われましたが、実は中国が台頭し、ゲームのルールが変わっていました。

論旨は、著者の後記に尽きます。

p.518
せっかく自分たちに優位性のある技術なのにそれを大事にしない。競争相手に対して技術を武器のように使うなんてもってのほかで、争いごとを好まない。マイクロマネジメントは得意でも、大局的、戦略的視点に立てない。国家は技術によって興り、技術を失うことによって滅ぶ。そうした考え方が経営者、官僚、政治家、ジャーリズムに希薄だった。(中略)

TSMC誘致以降、経産省”安保族”と呼べそうな一群の官僚によって半導体などの先端技術に巨額の資金が投入されている。それは、航空母艦が必要な時代に戦艦大和を建造するように見えなくもない。その方向性が正しかったかどうかは数年後に明らかになるだろう。

私の人生を振り返ることもできました。ベルリンの壁が崩壊した2週間後、私はニューヨークで国際会議に参加していました。議題は貿易摩擦。プレストウィッツやファローズを読んで半導体問題を議論しました。
その4ヶ月後に、北京大学とインゼミを行いました。天安門事件の制裁が続く中で、ほとんど実のある話はできませんでした。21歳の4ヶ月の間に、その後の40年を決める2都市を訪れていたことになります。
経済発展論のゼミでは、途上国の経済発展を促すためには、技術移転を進めるべきだというのが当時の論調でした。それほど途上国の生活は悲惨でしたし、日本にも余裕がありました。
しかし、パックス・アメリカーナが終わり、中国が台頭して帝国主義が復活すれば、各国の産業政策も変わります。まさに地経学の時代になりました。
エンジニアを育て、メーカーの経営者を10年単位で育て、官民一体となって戦わないと、孫の代によい暮らしは残せないのではないでしょうか。

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