日本、シンガポール、オランダの教育をみて、オランダで子供を育てることについて書いてみます。結論から言えば、各国それぞれ良いところがあり、「子供自身の性格・能力による」ということでしょう。所詮、親が良かれと思うことは親のエゴでもあり、子供にとって本当に良かったかは後にならないとわかりません。
オランダの教育も素晴らしく、「5-3-1基準」を満たす国としては申し分ありません。ただ、次の2点は理解した方がよいと思います。
ひとつは、教育は家族類型に影響されているということです。家族類型を復習しましょう。
オランダは絶対核家族。自由を尊重し、格差を容認します。なので教育も、生徒の自主性を尊重し、ユニークであることを褒めます。このあたりは米英と一緒ですね。
なので、リーダーシップや想像力を伸ばしたいという人にはよい国だと思います。ただ、自由すぎて、私のような日本の教育を受けた親は、教科書がないことが不安になったりします。歴史で半年、黒死病をやったり、第一次世界大戦を学んでいたりすると、他の時代は、どうでもいいのかな?というように。
日本の教育は良くも悪くも標準化されています。先生の当たり外れが少なくなるよう、教科書に沿って教えてくれます。鎌倉時代はやるけど、室町時代は飛ばすとかは通常ないわけです。そんなムラは気にならない。子供のクリエイティビティが伸びればよいならオランダは良いでしょう。
もう一つは、時間軸です。「子供をどこで育てるか」でも触れましたが、これから伸びる国は権威主義的な国が多いのです。親としては、自由な国で伸び伸びと育ってほしいと思うかもしれません。しかし、それが権威主義的な社会に対応できない性格になり、子供将来を制限してしまうかもしれないのです。
私は、アメリカが書き直した戦後の教育を受けたので、アメリカ的な自由が良いという価値観を持っています。しかし、そうした世界はむしろ少数で、グローバルサウスと言われるような地域はむしろ権威があることを前提に暮らしています。それが悪いわけではありません。
たとえばですが、アジアの時代に漢字を読むことは必須でしょう。科挙とはこの難しい表意文字に精通し、四書五経をそらんじる世界です。シンガポールや日本の教育は、漢字を覚えるには最も効率よくなっており、そこには「ガマン」が必要なのです。
AIが発達して、漢字を読んでくれたり、意味を英語で教えてくれたりはします。しかし、漢字を自ら判読できるということは大きな差になるわけです。たとえば、オランダで中国の歴史を学んだとします。欧州の生徒は、「Mao」と言われても慣れない固有名詞が全く頭に入りません。漢字を習っていれば「毛沢東」のことだとわかるわけです。
オランダにも日本人学校があり、ちゃんと漢字は習います。ただ、他のオランダの男の子が27文字覚えてサッカーしているのに、自分だけ9年間、ヒタスラ漢字ドリルができるかですね。
OBCでも述べましたが、権威的な社会で仕事をするノウハウというのは、卑下するものでもありません。三菱商事のサウジ担当になったら、むしろ、鍛えなければならない筋肉なのです。自由なオランダで権威主義的な組織を学び、敬語をマスターするというのは、簡単ではありません。
まとめますと、やはり、5-3-1基準に沿うように、可能なら、複数の国で子育てすることをおすすめしたいです。オランダの自由な発想を伸ばす力は素晴らしいですし、芸術、スポーツをするには恵まれています。小学校の写生会は、国立美術館でレンブラントを模写とかできますから。
シンガポールは4大文明がぶつかる稀有な都市なので、異文化が学べますし、英語と中国語の双方が身につきます。ただ、AI時代に重要な芸術的なセンスやスポーツで得られるリーダーシップは学べません。
ご参考になれば。