伯野 卓彦 NHK出版 2007/1
NHKチーフディレクターによる長銀破綻ルポ。NHKスペシャルの取材を元にできています。
2005.05.29
日本の群像 再起への20年
第2回 銀行マンの苦闘
さすがに、構成がしっかりしていますね。「文字の人」が書くドキュメントと違い、右脳を刺激して、絵が浮かぶように書かれています。長銀最後の頭取、鈴木さんに焦点をあて、最後の10年を追っています。金融のバックグラウンドがない人でも、さっと読めます。
ポイントは、05年に放映されたときと、社会の見る目が変わったことでしょうか。邦銀がモデルにしていた投資銀行への評価が一変し、本書の副題にある「日本型金融哲学」が再評価される時代がやってきました。鈴木さんのコメントは、こちら。
96年を境に、日本は、金融を市場原理にゆだねてしまったわけです。それまでとは違って政府はもう立ち入らないというのがポリシーになったのです。でも、それだけのことであって、いまだに、日本社会にふさわしい、新しい金融理念や哲学は見えていないと思うんです。(中略)
市場原理のもとでグローバル化された経済は、ダイナミックに動きますから、機器は必ず出てきてしまうと思うんです。平坦な道はあり得ませんから、どこかでゆがみが出てきて、それが原因になって津波のような危機が出てくるのだと思うんです。そのとき、日本社会、日本国民はどうなるのか。やはり、市場原理は原理としても、それだけに任せきりではなくて、しっかりと方向性を見据えなければいけない。p.17
再び金融機関を税金で救うとしても、一度、金融自由化を検証する必要はありそうですね。衆議院の財務金融委員会(2008/11/5)で、この点について、麻生総理に質疑がありましたが、政府の基本方針が変わったのかも、よくわかりませんでした。