【本】ランド 世界を支配した研究所

 ランド

Soldiers of Reasons    

by  Alex Abella

アメリカのシンクタンク、ランド研究所のレポート。アメリカのインテリジェンスの高さを確認できる一冊です。 その研究分野は、軍事にとどまらず、ゲーム理論など多岐にわたります。30人近いノーベル賞受賞者を輩出。所属していた研究員も、ヘンリー・キッシンジャー、ドナルド・ラムズフェルド、コンドリーザ・ライスなど、実際の政権で影響力を持った人ばかり。 一方、国家機密を取り扱うことから、閉鎖的にならざるをえず、

もしこの戦争に負けていたら、我々は全員、戦争犯罪人として刑事告発されていたことだろう

という危うさもはらんでいます。 興味深かったのは、この部分。 ランドのシステム分析はその中核的な部分でアメリカ的であった。つまり、すでに存在する現実に制約されることを拒んだ。(中略)

システム分析は夢を見ることである。しかも大きく夢を見る自由を持っていた。現実の世界には一定の選択肢しかないという考え方を捨て去り、自ら望む方向へ世界を変えてしまおうと努力するのだった。「我々ならできる」といった精神であり、人間が持つ無限の相違を信じるということでもある。p.83

最近の”Yes We Can”でも感じたことですが、シンクタンクもPuritanなんですね。その欠点は、

  • [的確な質問」をしなければならないのに、そんな質問に欠かせない仮説を精査してない
  • 数式に転換できい友情や誇り、士気などを分析の対象から外したこと

本書の中でも、ベトナム戦争や、最近のテロとの戦いの分析がでてきます。知的レベルの高い人たち集まる組織で、「王様は裸ではないか」というのは、どこの国でも難しいんですね。 霞ヶ関を変えるというのであれば、まず、この本を読んで、このレベルの頭脳戦を日本はどこでやるのか考えてからなんだと思います。 では。